Ⅰ 横浜を取り巻く状況 ◆人口減少社会の到来、超高齢社会の進展 ・既に進行している生産年齢人口の減少や、2019(平成31)年をピークとする人口減少(2015(平成27)年国勢調査ベースの将来人口推計)に加え、2016(平成28)年には、死亡数が出生数を上回り、戦後初めて自然減に転じました。合計特殊出生率は、近年1.3台で推移し、2016(平成28)年は、1.35となっています。 ・子育て世代の転入や出生率の向上にもつながる、子ども・子育て支援、教育の推進、女性・シニア・若者の活躍支援、これまで力を入れてきた、誰もが自分らしく活躍できる社会を実現するための取組が、より一層重要になります。 ・近年、市内在住外国人が増加しています。2017(平成29)年末時点の外国人人口は9万人を超えており、多文化共生の取組の重要度が増しています。 ・65歳以上人口が100万人に、75歳以上人口が60万人に、それぞれ迫ると見込まれる2025(平成37)年が間近となります。健康で自立した生活が続けられるよう、健康づくりの支援を進めるとともに、必要な時に医療や介護を提供できる体制づくりが今まで以上に必要になります。 【図1 横浜市の将来人口推計】 図1~3 資料:政策局「横浜市将来人口推計」(平成29年12月) 人口ピーク(中位推計) 2019年 373万人 【図2 横浜市の年齢3区分別人口】 【図3 横浜市の年齢3区分別人口の割合】 ◆都市間競争の加速 ・これまで、人や企業を惹きつける魅力あるまちづくりを進め、みなとみらい21地区の開発や企業誘致に取り組んできた結果、昼夜間人口比率は改善傾向にあります。 ・2017(平成29)年度に実施した横浜市外転出者意識調査の結果は、横浜への再転入意向のある方が約8割を占めるなど、横浜の魅力を裏付けるものとなっています。 ・一方で、市内総生産や法人市民税額など、東京と比較した場合、経済規模で大きな差があります。また、横浜市から東京都区部への転出だけでなく、川崎市、相模原市、県央地区、湘南地区に対しても、転出超過の状態が続いています。 ・横浜の活力をより一層向上させるために、これまでの取組を加速させ、人口の社会増の維持や、積極的な企業誘致、観光・MICE※などにより交流人口を拡大することが欠かせません。 ・世界でも確固たる存在感を発揮する都市であり続けるため、常に新たなチャレンジと発信を行うことで、横浜のブランド力を高めることが必要です。 ※MICE:企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)などの総称 【表1 みなとみらい21地区の街区開発の進捗状況】 【図4 地域別にみた転入・転出者数(平成29年中)】 資料:政策局「横浜市の人口」(平成30年3月) ◆グローバル化の進展、産業構造の変化、技術革新                     ・社会のデジタル化が進展し、ビッグデータ解析など、より効果的なデータの分析・活用ができる環境が整い、AI・ロボット等の先端技術を活用し、福祉・医療、防災、観光、経済等の幅広い分野における、サービスの高度化などが期待されています。 ・経済活動のグローバル化の進展や産業構造の変化、IoT、AIなどの技術革新が加速する中で、国内外からの戦略的な企業誘致、産業・人材の集積をいかしたイノベーション創出などにより、市内企業の事業機会の拡大を促し、横浜経済のさらなる活性化を推進することが、これまで以上に求められます。 ・多様な働き方へのニーズに対応した取組を積極的に支援するなど、働きやすい環境づくりを推進し、労働力人口の減少に対応していくことが、今後ますます重要になります。 ◆文化芸術への関心の高まり ・横浜トリエンナーレは、2001(平成13)年に第1回が開催されて以来、定期的に開催され、最新の現代アートの動向を提示する国際展として定着しました。 ・また、2012(平成24)年以降、Dance Dance Dance @ YOKOHAMA、横浜音祭りの横浜芸術アクション事業や東アジア文化都市としての取組により、横浜の持つ魅力を国内外に発信し、文化芸術創造都市としての存在感を発揮してきました。 ・こうした取組に加え、世界の大都市にあるような、質の高い文化芸術に触れることができる本格的な劇場を整備することにより、横浜の魅力をさらに高め、プレゼンスを大きく向上させることが期待できます。 ◆花と緑にあふれるまちづくり、地球温暖化対策など環境分野の取組の加速 ・平成21年度から進めてきた「横浜みどりアップ計画」の取組や、600万人が来場した全国都市緑化よこはまフェアの成果などにより、市民の花や緑に親しむ機運が一層高まっています。また、都市農業振興基本法の制定により、市街地における都市と農地のあり方が変化し、都市と農の共生が求められるなど、未来に花と緑を引き継ぐ、豊かな環境づくりを進める時期を迎えています。 ・国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)においてパリ協定が採択されたことで、世界的に地球温暖化対策が加速しています。このような世界的な取組のもと、本市としても、地球温暖化対策を積極的に推進し、全国の取組をけん引していくことが期待されています。 ◆交通ネットワークの変化 ・広域的には、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の開通(寒川北IC~海老名JCT等)により、東名高速道路から東北自動車道までつながる高速道路が形成されたことに加え、2020(平成32)年頃の羽田空港の国際便増便や新東名高速道路の開通、2027(平成39)年の中央新幹線(リニア)の開業が予定されるなど、横浜の交通利便性の向上が見込まれています。 ・市内では、横浜北線が開通したことに加え、横浜環状北西線・南線等の開通や神奈川東部方面線の開業が予定されており、横浜を取り巻く人やモノの流れの大きな変化が見込まれ、さらなる成長・発展の大きなチャンスを迎えています。 ・これらの利便性の向上の機会を最大限に活用し、新たな交通結節点と連動したまちづくりや産業拠点の形成を進め、都市の活性化につなげることが必要です。 【図5 交通ネットワークの変化】 ◆郊外部の活性化                                 ・郊外部の住宅地では、自然豊かで良好な住環境や、活発な地域活動など、それぞれの地域の特色をいかしたまちづくりを進め、横浜の魅力を最大限に引き出してきました。 ・一方で、大規模団地等の集合住宅の老朽化や空き家の増加、少子高齢化の急速な進展などが見られ、こうした都市共通の課題に積極的に取り組んでいくことが必要です。 ・そのためにも、市民の生活利便性、活力の維持・向上とともに、将来の本格的な人口減少社会を見据えて、効率的なまちづくりに取り組んでいくことが重要です。 ・また、買い物や通院といった日常生活を支える地域の交通サービスは、高齢化による人口構成の変化や住民のニーズ等に対応し、将来にわたり確保していく必要があります。 ◆地域コミュニティの活力向上                             ・市内の各地域では、それぞれの実情に合わせて、自治会町内会、企業、学校、NPO法人などが連携し、魅力と活力あふれる地域がつくられてきました。このような市民力は、横浜の大きな力となっています。 ・一方、地域課題が複雑化・多様化し、地域の関係が希薄化する中で、地域のつながりが果たす役割が注目されています。単身高齢者や子どもを地域で見守る環境づくりなどのために、地域コミュニティの力が不可欠です。 ◆防災・減災意識の向上、あらゆる災害への対応の強化                 ・全国的に多発している局地的な大雨等や、近い将来に発生が危惧されている大規模地震から市民の生命と財産を守るため、災害に強いまちづくり、自助・共助の取組に力を入れ、防災・減災機能の強化を進めてきました。 ・市民生活や経済活動を将来にわたり支えるため、政府が進める国土強靱化を踏まえ、これまでの防災・減災の考え方を一歩進め、様々な自然災害に対し、被害を最小限に抑え、迅速に復旧・復興できる「強さ」と「しなやかさ」を持った都市づくりを進めることが期待されています。 【図6 市政への要望】 資料:政策局「横浜市民意識調査」(平成30年3月) ◆公共施設の老朽化                                   ・人口急増期に集中して整備し、これまで市民生活や横浜経済を支えてきた都市インフラの老朽化が進行しています。そのため、適切な保全・更新を今後も行っていく必要があります。 ・学校や市営住宅等の公共建築物については、目標耐用年数を築70年とした場合、平成40年代以降に集中して大量の建替えの必要が生じるため、現段階から平準化を考慮して計画的に建て替えていくことが求められます。 ・人口減少社会を見据え、公共建築物の建替えにあたっては、地域のニーズ等を踏まえた再編整備を検討するとともに、今後の施設のあり方について検討をしていく必要があります。 【図7 整備後50年以上経過する施設の割合】 (上段:平成29年度末時点、下段:42年度末時点) *42年度末時点の数値は、現在の施設を、更新・建替えをせずに使用し続けた場合の試算値。 資料:財政局 ◆戦略的・計画的な土地利用                              ・これまで、横浜の将来にわたる持続的発展のため、良好な緑や農地の保全などとのバランスを図りながら、メリハリある土地利用を進めてきました。 ・横浜を取り巻く環境が大きな転換期を迎える中で、市の資源・ポテンシャルを最大限発揮させ、都市課題の解決や、地域の活性化を着実に進めていくため、戦略的・計画的な土地利用誘導の推進、及び都市環境の変化に対応した土地利用規制の見直しの検討が必要です。