4章、主要な疾病ごとの切れ目ない保健医療連携体制の構築 【30ページ】 4章1、がん 現状と課題 がんによる死亡率の減少のためには、予防、早期発見、医療の各段階で、市民の適切な行動につながるような情報提供と、がんになる前からの市民のがんへの理解を進めることが大切です。 がん検診の受診率は、国の目標が50%から60%に引き上げられました。令和4年国民生活基礎調査の結果では、本市の受診率は胃がん、乳がんは50%台でしたが、60%には達しておらず、より効果的な受診勧奨の検討が必要です。また、精密検査受診率は、中期計画の目標を90%としていますが、目標に達しておらず、効果的な未受診対策や医療機関からの結果報告の把握体制を充実させる必要があります。 全国と比べて年齢調整死亡率の高い乳がんや、がん検診受診率の低い子宮頸がんについて、早期発見の行動につながるよう、検診の受診、予防、治療に関するがん教育、情報提供を強化する必要があります。 本市が実施するがん検診では、胃、肺、大腸がん検診の受診は、70代前半の方が多い状況です。 国が指定する都道府県がん診療連携拠点病院、地域がん診療連携拠点病院、県が指定する神奈川県がん診療連携指定病院として市内13病院が指定され、質の高いがん医療や相談支援を提供しています。また、本市では独自に乳がん連携病院や小児がん連携病院を指定し、医療の質の向上や支援の充実に取り組んでいます。 がんと診断された時から緩和ケアが提供されるよう、がん診療連携拠点病院等において専門的な緩和ケアを提供しています。また、本市では病院と連携して緩和ケア医の育成に取り組んでいます。地域全体で、がんにおける緩和ケアを提供できる連携体制が求められています。 患者の療養生活が多様化する中で、患者や家族のクオリティオブライフの向上のためには、相談支援へのアクセスのしやすさや、治療に伴う苦痛の軽減などが求められます。 食事を通して栄養を摂取することや、治療の合併症予防及びその病状軽減は重要であり、がん患者に対する口腔の管理に、歯科医師や歯科衛生士等の口腔ケアチーム、また、適切な栄養管理に、医師、看護師、管理栄養士、言語聴覚士等の栄養サポートチームと連携しつつ対応することが求められています。本市では、横浜市歯科医師会、横浜市立大学との3者による周術期口腔機能管理の推進に向けた包括連携に関する協定を締結して、体制整備を推進するとともに市民啓発等を実施しています。 【32ページ】 目指す姿 全ての市民ががんに関する正しい知識を持つことにより、予防行動やがん検診受診、適切な医療につなげることで、がんによる死亡率の減少を目指します。 がんのり患に備えることにより、自身や身近な人ががんと診断された際に、適切な医療を受け、支えあい、安心して生活できる地域社会の実現を目指します。 指標 がんの75歳未満年齢調整死亡率、人口10万人対の減少、現状、124、目標、100 がん患者のクオリティオブライフの向上、現在自分らしい日常生活を送れていると感じるがん患者の割合、現状、70.5%、目標、増加 施策の方向性 取組1 市民のがんへの理解が深まり、生活習慣の改善及びがん検診受診などの予防行動や、適切な医療機関の受診につながるよう、普及啓発に取り組みます。 取組2 がん診療連携拠点病院等のがん診療の機能、連携強化等を図り、適切な治療の推進やがん患者の苦痛軽減に取り組みます。 がん患者やその家族等に対する相談支援、情報へのアクセスを容易にするとともに、治療と生活、仕事の両立支援を推進し、がん患者が自分らしく生活を送れるよう、支援を行います。 【33ページ】 主な施策 がん予防に向けた取組、がん医療の取組、がんとの共生、がんになっても安心な社会づくりの基盤構築に取り組みます。 【34ページ】 4章2、脳血管疾患、心疾患 現状と課題 脳血管疾患、心疾患について 「神奈川県循環器病対策推進計画」の動向を注視しながら、対策を推進する必要があります。 高齢化が進むことにより、脳卒中や心筋梗塞といった脳血管疾患と心疾患の患者数の増加が予想されています。 日常生活の場において発症や再発を予防するために、生活習慣についての理解を広める取組が求められており、病院とかかりつけ医とのシームレスな連携も必要です。 医師の働き方改革開始後も持続可能な救急医療体制の構築が必要です。 手術前後の口腔ケアによって誤嚥性肺炎の予防や入院日数の短縮など治療成績が向上するとされており、本市、横浜市歯科医師会、横浜市立大学の三者による周術期口腔機能管理の推進に向けた包括連携に関する協定を締結し、連携して周術期口腔ケアの推進に取り組んでいます。 回復期、維持期の患者に関してはクオリティオブライフ、生活の質の向上のために、社会復帰に向けたリハビリテーションや、診療科を超えた多職種の連携が必要です。 摂食嚥下障害のある患者に対しては、誤嚥性肺炎を予防するため摂食嚥下リハビリテーションが重要です。 脳血管疾患について 脳血管疾患は再発率が高く、また再発時は重い後遺症リスクが特徴であることから、一度発症した患者への二次予防の取組が必要です。 心疾患について 心疾患の再発予防に効果のあると言われている入院、外来心臓リハビリテーション実施件数が、全国平均より下回っています。 市内の心大血管リハビリテーション料算定施設は27施設ありますが、更なる体制整備が必要です。 【36ページ】 目指す姿 脳血管疾患、心疾患の発症時における速やかな救命処置、搬送体制の確保、治療水準を維持するとともに、治療後の日常生活の場においても質の高い生活を送ることができる社会を目指します。 指標 脳血管疾患の年齢調整死亡率、人口10万人対、現状、62.3、目標、減少 心疾患の年齢調整死亡率、人口10万人対、現状、144.8、目標、減少 施策の方向性 脳血管疾患、心疾患について 脳血管疾患、心疾患の発症予防、再発予防のため、生活習慣改善等の取組を行います。 医師の働き方改革実施後も適切な観察、判断等に基づいた医療機関搬送を維持するため、持続可能な救急医療体制を構築します。 脳血管疾患について 一度発症した患者の在宅復帰までのサポートや再発予防の理解を深めるための取組を推進します。 心疾患について 再発や再入院防止、長期予後改善のためのリハビリテーションを必要な方が受けられるよう、回復期リハビリテーション病院や介護事業者を含む多診療科、多職種による地域連携を進め、支援体制を整備します。 【37ページ】 主な施策 発症予防、急性期の適切な医療体制の構築、合併症や再発の予防、在宅復帰支援に取り組みます。 【38ページ】 4章3、糖尿病 現状と課題 糖尿病が強く疑われる者は、全国で約1,000万人であり、2012年から2016年の過去4か年で50万人増加し、今後も増加することが予測されており、糖尿病で継続的に医療を受けている人は、2017年度時点で約330万人です。 糖尿病は神経障害、網膜症、腎症、足病変といった合併症を併発し、心筋梗塞や脳卒中等の心血管疾患のリスク因子となるだけでなく、がん、転倒、認知症等のリスクも高めます。また、歯周病と糖尿病は相互に悪影響を及ぼします。 糖尿病の重症化予防及び合併症の早期発見には、内科や糖尿病内科のかかりつけ医を持ち、眼科での網膜症の検査、歯科での歯周病のチェックを定期的に受け、適切な治療につながることが重要であり、そのための医療の連携が必要です。本市では横浜市医師会と横浜市歯科医師会が糖尿病、歯周病予防のための横浜市医科歯科連携協定を締結し、連携して治療にあたる取組が進められています。 糖尿病性腎症による全国の新規透析導入患者数は2021年で15,271人であり、糖尿病は現在、新規透析導入の主要な原因疾患です。糖尿病の早期発見、早期治療と重症化予防は、慢性腎臓病への進行を抑制するための取組として重要です。また、糖尿病網膜症は、成人の中途失明の要因でもあります。 糖尿病、糖尿病性腎症の重症化を予防し、人工透析導入者を減少させるため、横浜市国民健康保険の特定健康診査等の結果を用いて、主治医とも連携を図りながら保健指導を行っています。 また、がん検診ガイドに慢性腎臓病に関する記載をして啓発しています。 壮年期から高齢期まで、糖尿病の早期発見、適切な受療継続、良好な生活習慣の継続には、医療と保健指導、療養指導、日常生活支援及び介護との連携が重要となっています。 糖尿病は、生活の質や社会経済的活力と社会保障資源に多大な影響を及ぼすことから適切な対策が必要です。 【40ページ】 目指す姿 生活習慣の改善や、患者の治療継続、生活支援に取り組み、これらに関わる地域の保健、医療、介護の連携強化を図ることにより、糖尿病の発症予防、重症化予防を目指します。 内科や糖尿病内科のかかりつけ医と眼科、腎臓内科、歯科、薬局等の医療連携と、生活を支える地域の多職種の連携を進め、糖尿病の合併症の早期発見や治療中断を防ぎます。 指標 特定健診でヘモグロビンエーワンシーが8.0%以上の者の割合、現状、1.25%、目標、減少 糖尿病性腎症による新規人工透析導入患者数、現状、2023年度神奈川県人工腎臓等保有状況調査により算出、目標、減少 施策の方向性 糖尿病の発症予防及び重症化予防のため、保健指導に取り組みます。 患者に対するケアレベルを向上させるため、医療職、介護職等の支援者の人材育成を行うほか、多職種からなる支援者による相談支援の充実を図ります。 【41ページ】 主な施策 糖尿病の発症予防及び重症化予防、医療、介護連携の推進に取り組みます。 【42ページ】  4章4、精神疾患 現状と課題 精神疾患の全体認識について コロナ禍等による社会環境や人間関係の変化により、抑うつや不安が広がるなど、精神科医療を必要とする人が増えています。一方で、受診に抵抗を感じる人や、精神疾患を否認する人も多いため、医療につながりにくく、入院が必要な期間も長くなりがちです。地域で支える仕組みが少ないとの指摘もあります。 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築について 区域の協議の場を全区に設置し、取組を進めています。医療機関と福祉関係者等との連携が十分とは言えず、連携に向けた取組が求められています。 精神科救急について 県、川崎市、相模原市との4県市協調による精神科救急システムが運用されており、対象患者数は増加しています。患者像の多様化に合わせて、専門的治療につなげることや退院後の地域移行に向けた視点が重要視されています。 措置入院者の退院後支援について 措置入院となった人は、複雑多岐にわたる問題を抱えていることも多く、退院後もその人らしい生活を送るためには、地域での支援が必要です。 自殺について 本市の自殺者数は、2019年以降増加しており、特に女性の自殺者の増加が目立っています。自殺を考えている人のサインに早く気づき、見守り、つなぐ人が増えるよう、広報、教育活動等に取り組んでいくことが必要です。 依存症について 依存症は本人に自覚が少ないことが多く、治療や支援につながりにくいことが課題であり、治療や支援が必要な人やその周囲の人たちが、依存症に関する正しい知識を得て、相談や支援を受けやすくする環境を整備することが必要です。 【44ページ】 目指す姿 市民が疾患に対する正しい知識を持つとともに、精神障害者が、地域の一員として安心して自分らしい暮らしを送ることができる社会の実現を目指します。 適切な医療につなげることで入院の長期化を少なくするとともに、退院後も地域で安心して生活できるような支援体制の構築を目指します。 指標  精神病床退院患者における地域平均生活日数、現状、327.3日、目標、331.5日 施策の方向性 こころの健康を維持する人の増加に向けて、メンタルヘルスに関する普及啓発や専門職の人材育成に取り組みます。 医療機関や福祉、保健関係者の連携強化を推進し、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムを構築します。 精神科救急体制を充実させ、良質かつ適切な医療を提供します。 【45ページ】 主な施策 こころの健康を維持する人の増加、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築、精神科救急体制の充実に取り組みます。