第2章 本市における依存症に関連する状況と課題 1 本市の依存症に関する状況 (1) 各依存症に関連する状況 ア:アルコール依存症に関連する状況 (ア)アルコール依存症者の割合  平成30年度に実施された厚生労働科学研究の研究結果に基づく推計によると、アルコール依存症の生涯経験者の割合は男性の0.8%、女性の0.2%となっています(脚注2)。  この結果に基づいて、本市におけるアルコール依存症の生涯経験者数を推計すると、男性は約12,000人、女性は約3,000人となります。 図表2-1:アルコール依存症者の割合(推計値) (表ここから) 項目:アルコール依存症の生涯経験者の割合(推計)(脚注3) 本市におけるアルコール依存症の生涯経験者推計数 性別 割合 生涯経験者数 男性:0.8%(0.5%〜1.2%) 約12,000人 女性:0.2%(0.0%〜0.4%) 約3,000人 (表ここまで) 出典:「2018年わが国の成人の飲酒行動に関する全国調査」(厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業) 分担研究平成30年度報告書)(研究分担者:金城文、尾崎米厚、桑原祐樹、樋口進) 注:推計にあたっては、「住民基本台帳・性別・年齢階級別人口」(2017年9月30日)より、20歳以上の人口を用いた (脚注2)「2018年わが国の成人の飲酒行動に関する全国調査」(厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業) 分担研究平成30年度報告書)(研究分担者:金城文、尾崎米厚、桑原祐樹、樋口進) (脚注3)( )内の値は、男女ともに標本調査の結果に基づく区間推定(95%信頼区間)の値である。これは同じ母集団から同数の標本を抽出して100回の調査を実施した場合、アルコール依存症の生涯経験者の割合が、95回程度は( )内の数値の範囲内に収まることを指す。 (イ)飲酒を取り巻く状況  本市の1世帯あたりの、1か月の家庭内での酒類消費金額(年平均額)の推移を見ると、平成27年以降、3,000〜3,500円程度であり、家計支出全体の1.0%前後の水準で推移しています。 図表2-2:世帯あたりの、1か月の家庭内での酒類消費金額の推移(二人以上の世帯、横浜市) (表ここから) 年度:平成27年 平成28年 平成29年 平成30年 令和元年 支出金額(支出全体に占める比率):3,526円(1.1%) 3,175円(1.0%) 3,583円(1.1%) 3,197円(1.1%) 2,911円(0.9%) (表ここまで) 出典:総務省「家計調査」 注:家庭内で消費された酒類に限られており、飲食店等での酒類消費は含まれていない  また、本市が平成27年に市内の小学5年生・中学2年生に対して実施した調査によると、小学5年生の31.4%、中学2年生の44.3%が、「酒を飲みたいと思ったことがある」と回答しています。 図表2-3:「酒を飲みたいと思ったことがある」と回答した児童・生徒の割合 (表ここから) 児童・生徒(n=調査数) 飲みたいと思ったことがある 飲みたいと思ったことがない 無回答 小学5年生(n=830) 31.4% 68.4% 0.1% 中学2年生(n=971) 44.3% 55.4% 0.3% (表ここまで) 出典:横浜市「薬物、たばこ、酒に対する意識等調査報告書」(平成27年) (ウ)生活習慣病のリスクを高める量の飲酒に関する状況  厚生労働省「健康日本21《第2次》」によれば、男性の場合1日あたり40g(脚注4)以上、女性の場合1日あたり20g(脚注5)以上の純アルコール量を摂取すると、生活習慣病のリスクが高まるとされています。本市が実施した「平成28年度 健康に関する市民意識調査」の結果を見ると、回答者のうち男性は19.6%、女性は15.6%が「生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者」に該当していました。また、「生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者」の割合を年齢別に見ると、男性は50歳代が、女性は40歳代が最も高くなっています。  なお、国の「国民健康・栄養調査」によれば、生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の割合は、男性15.0%、女性8.7%となっており、本市の水準は全国よりやや高くなっています。また、平成22年から平成30年にかけて、生活習慣病のリスクを高める飲酒をしている女性の割合が、1.2%ポイント上昇しています(脚注6)。 脚注4:ビールロング缶2本(1リットル)に含まれるアルコール量に相当する。 脚注5:ビールロング缶1本(500ミリリットル)に含まれるアルコール量に相当する。 脚注6:厚生労働省「国民健康・栄養調査報告」(平成22年・平成30年) 図表2-4:生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している人の割合(横浜市) (表ここから) 男性年齢(n=調査数) 割合 20歳代(n=361) 6.6% 30歳代(n=988) 14.5% 40歳代(n=2,486) 19.8% 50歳代(n=2,514) 23.4% 60歳代(n=606) 18.8% 全体(n=6,955) 19.6% 女性年齢(n=調査数) 割合 20歳代(n=847) 11.5% 30歳代(n=1,471) 13.9% 40歳代(n=1,834) 20.3% 50歳代(n=1,155) 17.7% 60歳代(n=700) 8.7% 全体(n=6,007) 15.6% (表ここまで) 出展:横浜市「平成28年度 健康に関する市民意識調査」 図表2-5:生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している人の割合(全国) (表ここから) 性別 割合(年度) 男性 15.3%(平成22年) 15.0%(平成30年) 女性 7.5%(平成22年) 8.7%(平成30年) (表ここまで) 出典:厚生労働省「国民健康・栄養調査」(平成22年・平成30年) (エ)アルコールに関する相談状況 本市におけるアルコールに関する相談状況を見ると、こころの健康相談センターでは、平成29年5月より依存症相談窓口(依存症専門相談)を開設し、平成30年度以降は年間のべ400件程度のアルコールに関する相談を受け付けています。 また、区役所では年間のべ1,100〜1,900件程度のアルコールに関する相談を受け付けています。 図表2-6:こころの健康相談センターにおけるアルコールに関する相談のべ件数(横浜市) (表ここから) 年度 件数 平成27年度 電話43件 面接24件 総数67 平成28年度 電話54件 面接33件 総数87 平成29年度 電話108件 面接68件 総数176 平成30年度 電話298件 面接136件 総数434 令和元年度 電話329件 面接91件 総数420 ※相談窓口開設平成29年度以降 (表ここまで) 出典:本市資料 図表2-7:区役所におけるアルコールに関する相談のべ件数(横浜市) (表ここから) 年度 件数 平成27年度 面接相談113件 訪問相談122件 電話相談855件 その他2件 総数1,092件 平成28年度 面接相談230件 訪問相談122件 電話相談865件 その他0件 総数1,217件 平成29年度 面接相談314件 訪問相談113件 電話相談1,177件 その他0件 総数1,604件 平成30年度 面接相談343件 訪問相談165件 電話相談1,360件 その他17件 総数1,885件 令和元年度 面接相談369件 訪問相談175件 電話相談1,147件 その他11件 総数1,702件 (表ここまで) 出典:本市資料 イ:薬物依存症に関連する状況 (ア)薬物使用者の割合  令和元年度に実施された国立精神・神経医療研究センターの「薬物使用に関する全国住民調査」の結果によると、生涯で1度でも薬物(有機溶剤、大麻、覚醒剤、MDMA、コカイン、ヘロイン、危険ドラッグ、LSDのうちいずれかの薬物)の使用を経験した人の割合は、2.5%となっています。 この結果に基づいて、本市における薬物使用の生涯経験者数を推計すると、約59,000人となります。 図表2-8:薬物使用者の割合(推計) (表ここから) 生涯で薬物をしようした人の割合(脚注7) 2.5%(2.0%〜3.1%) 本市における薬物使用の生涯経験者推計数 約59,000人 (表ここまで) 出典:国立精神・神経医療研究センター「薬物使用に関する全国住民調査(2019年)<第13回飲酒・喫煙・くすりの使用についての全国調査>」(令和元年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業)分担研究報告書)(分担研究者:嶋根卓也、研究協力者:猪浦智史・邱冬梅・和田清) 注:推計にあたっては、「住民基本台帳・年齢階級別人口」(2019年9月30日)より、本市15歳以上65歳未満の人口を用いた 脚注7:( )内の値は、標本調査の結果に基づく区間推定(95%信頼区間)の値である。これは同じ母集団から同数の標本を抽出して100回の調査を実施した場合、薬物の生涯経験者の割合が、95回程度は( )内の数値の範囲内に収まることを指す。 (イ)薬物を取り巻く状況  本市が平成27年に市内の小学5年生・中学2年生に対して実施した調査によると、小学5年生の70.6%、中学2年生の84.9%が、脱法ハーブや危険ドラッグが「簡単に手に入ると思う」または「少し苦労するが、何とか手に入ると思う」と回答しています。 図表2-9:「脱法ハーブや危険ドラッグを手に入れようとした場合、すぐに手に入ると思う」と回答した児童・生徒の割合 (表ここから) 児童・生徒(n=調査数) 割合 小学5年生(n=830) 簡単に手に入ると思う36.0% 少し苦労するが、何とか手に入ると思う34.6% ほとんど不可能だと思う17.7% ぜったい不可能だと思う10.2% 無回答1.4% 中学2年生(n=971) 簡単に手に入ると思う35.3% 少し苦労するが、何とか手に入ると思う49.6% ほとんど不可能だと思う10.4% ぜったい不可能だと思う4.0% 無回答0.6% (表ここまで) 出典:横浜市「薬物、たばこ、酒に対する意識等調査報告書」(平成27年) (ウ)薬物乱用の状況  本市における麻薬・覚醒剤使用による検挙者数を見ると、毎年400〜500人程度で推移しています。  また、薬物事件で少年保護事件の対象となった少年の数は、平成29年以降増加傾向にあり、令和元年は58人が薬物事件で少年保護事件の対象となっています。 図表2-10:麻薬・覚醒剤使用による検挙者数(横浜市) (表ここから) 年度 検挙人数 平成27年 麻薬143人 覚醒剤416人 総数559人 平成28年 麻薬142人 覚醒剤380人 総数522人 平成29年 麻薬144人 覚醒剤360人 総数504人 平成30年 麻薬188人 覚醒剤316人 総数504人 令和元年 麻薬172人 覚醒剤216人 総数388人 (表ここまで) 出典:横浜市統計書 図表2-11:薬物事件で少年保護事件の対象となった少年の数(横浜市) (表ここから) 年度 人数 平成27年 麻薬及び向精神薬取締法等11人 覚醒剤取締法5人 総数16人 平成28年 麻薬及び向精神薬取締法等12人 覚醒剤取締法2人 総数14人 平成29年 麻薬及び向精神薬取締法等18人 覚醒剤取締法5人 総数23人 平成30年 麻薬及び向精神薬取締法等32人 覚醒剤取締法10人 総数42人 令和元年 麻薬及び向精神薬取締法等48人 覚醒剤取締法10人 総数58人 (表ここまで) 出典:横浜市統計書  国立精神・神経医療研究センターが実施した調査(脚注8)によると、薬物乱用の対象となっている薬物の種類・内容は、覚醒剤が66.1%と最も多く、以下、揮発性溶剤、大麻が続いています。また、睡眠薬・抗不安薬などの処方薬や市販薬についても、一定の割合で乱用の対象となっています。 図表2-12:各種薬物の生涯使用経験(複数選択)(n=2,609) (表ここから) 生涯使用経験のある薬物 経験人数 割合 覚醒剤 1,725 66.1% 揮発性溶剤 928 35.6% 大麻 791 30.3% コカイン 238 9.1% ヘロイン 70 2.7% MDMA 250 9.6% MDMA以外の幻覚剤 207 7.9% 危険ドラッグ 386 14.8% 睡眠薬・抗不安剤 777 29.8% 鎮痛剤(処方非オピオイド系) 74 2.8% 鎮痛剤(処方オピオイド系:弱オピオイド含む) 37 1.4% 市販薬 303 11.6% ADHD治療薬 58 2.2% その他 76 2.9% (表ここまで) 出典:「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査」(平成30年度厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業:H29−医薬一般−001)分担研究報告書)(研究分担者:松本俊彦、研究協力者:宇佐美貴士・船田大輔・村上真紀・谷渕由布子) 注:表中の値は、2018年9月1日から10月31日までの2か月間に調査対象施設において、入院あるいは外来で診察を受けた「アルコール以外の精神作用物質使用による薬物関連精神障害患者」による生涯使用経験である 注:処方薬・医薬品については、治療目的以外の不適切な使用が対象 脚注8:「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査」(平成30年度厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業:H29−医薬一般−001)分担研究報告書)(研究分担者:松本俊彦) (エ)薬物に関する相談状況  本市における薬物に関する相談状況を見ると、こころの健康相談センターでは、平成29年5月より依存症相談窓口(依存症専門相談)を開設し、平成29年度以降は年間のべ100件以上の薬物に関する相談を受け付けています。また、区役所では年間のべ250〜600件程度の薬物に関する相談を受け付けています。 図表2-13:こころの健康相談センターにおける薬物に関する相談のべ件数(横浜市) (表ここから) 年度 件数 平成27年度 電話22件 面接4件 総数26件 平成28年度 電話20件 面接8件 総数28件 平成29年度 電話80件 面接36件 総数116件 平成30年度 電話82件 面接38件 総数120件 令和元年度 電話138件 面接39件 総数177件 ※相談窓口開設平成29年度以降 (表ここまで) 出典:本市資料 図表2-14:区役所における薬物に関する相談のべ件数(横浜市) (表ここから) 年度 件数 平成27年度 面接相談46件 訪問相談69件 電話相談131件 総数246件 平成28年度 面接相談24件 訪問相談59件 電話相談419件 総数502件 平成29年度 面接相談57件 訪問相談27件 電話相談235件 その他2件 総数321件 平成30年度 面接相談139件 訪問相談71件 電話相談366件 総数576件 令和元年度 面接相談84件 訪問相談35件 電話相談391件 その他3件 総数513件 (表ここまで) 出典:本市資料 ウ:ギャンブル等依存症に関連する状況 (ア)ギャンブル等依存症者の割合  本市が令和元年12月〜令和2年3月にかけて実施した「横浜市民に対する娯楽と生活習慣に関する調査」(以下「横浜市娯楽と生活習慣に関する調査」という。)の結果によると、過去1年以内にギャンブル等依存症が疑われる人の割合の推計値は成人の0.5%、生涯でギャンブル等依存症が疑われる人の割合の推計値は成人の2.2%(脚注9)となっていました。  この結果に基づいて、本市におけるギャンブル等依存症者数を推計すると、過去1年以内にギャンブル等依存症が疑われる人は約16,000人、生涯でギャンブル等依存症が疑われる人は約70,000人となります。  なお、国の調査(脚注10)、本市の調査いずれにおいても、ギャンブル等依存症が疑われる人が最もよくお金を使ったギャンブル等として、「パチンコ・パチスロ」との回答が最も多くなっています。 図表2-15:ギャンブル等依存症が疑われる人の割合(推計値) (表ここから) 分類 割合(脚注11) の推計人数 過去1年以内にギャンブル等依存症が疑われる人 0.5%(0.3%〜1.1%) 約16,000人 生涯でギャンブル等依存症が疑われる人 2.2%(1.5%〜3.4%) 約70,000人 (表ここまで) 出典:横浜市「横浜市民に対する娯楽と生活習慣に関する調査」(令和元年度) 注:ここでの「ギャンブル等」とは、パチンコ・パチスロや、ゲームセンターのスロットマシン、ポーカーマシン等のメダルや景品が当たるゲーム機、海外のカジノ、宝くじ、ナンバーズ、サッカーくじ、証券の信用取引または先物取引市場への投資なども含まれている 注:本調査は、「住民基本台帳・年齢階級別人口」(2019年9月30日現在)に記載のある18歳以上75歳未満の人を対象とし、ギャンブル等依存症が疑われる人の推計人数の算出にあたっては、18歳以上の人口を用いた 脚注9:この2.2%の中には、調査時点で過去1年以上ギャンブル等を行っていない者が一定数含まれており、例えば10年以上前のギャンブル等の経験について評価されている場合があることに留意する必要がある。 脚注10:「平成29年度 国内のギャンブル等依存症に関する疫学調査(全国調査結果の中間とりまとめ)」(ギャンブル障害の疫学調査、生物学的評価、医療・福祉・社会的支援のありかたについての研究 障害者対策総合研究開発事業(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)) 脚注11:( )内の値は、標本調査の結果に基づく区間推定(95%信頼区間)の値である。これは同じ母集団から同数の標本を抽出して100回の調査を実施した場合、ギャンブル等依存症が疑われる人の割合が、95回程度は( )内の数値の範囲内に収まることを指す。 数の算出にあたっては、18歳以上の人口を用いた。 (イ)ギャンブル等を取り巻く状況  本市における既存の公営競技・遊技場等の施設・店舗数は以下の通りです。  本市におけるパチンコ店の店舗数は、平成27年以降、減少傾向にあります。 図表2-16:本市における公営競技場等の状況(令和元年12月末現在) (表ここから) 種類 店舗数・施設数 出典 中央競馬 0場(※場外3場) 日本中央競馬会ウェブサイト 地方競馬 0場(※場外1場) 地方競馬全国協会ウェブサイト 競輪 0場(※場外1場) 公益財団法人JKAウェブサイト 競艇 0場(※場外1場) 日本モーターボート競走会ウェブサイト オ―トレース 0場(※場外1場) 公益財団法人JKAウェブサイト (表ここまで) 図表2-17:本市におけるパチンコ店の店舗数の推移 (表ここから) 年度 店舗数 平成27年度 235店 平成28年度 225店 平成29年度 211店 平成30年度 200店 令和元年度 193店 (表ここまで) 出展:神奈川県警資料 (コラムここから) コラム・統合型リゾート(IR)について 「特定複合観光施設区域整備法」(平成30年7月制定、以下「IR整備法」という。)に基づき、観光の振興・地域経済の振興・財政の改善に貢献することを目的に、国内で3か所を上限に統合型リゾート(以下「IR」という。)を設置することとしています。 IRとは、国際会議場施設、展示等施設、日本の文化や伝統、食などの魅力的なコンテンツを発信・提供する魅力増進施設、送客施設、宿泊施設等の観光振興に寄与する施設とカジノ施設から構成される一群の施設であって、民間事業者により一体として設置・運営されるものです。 本市では、このIRの実現に向けた検討・準備を進めています。IRを構成する施設の一つであるカジノに起因する依存症対策としては、入場回数制限、自己・家族による入場制限、広告・勧誘規制など、IR整備法に基づく対策に加え、事業者に対してはギャンブル等依存症に関する相談体制の整備、市、県、国、関係機関等と連携・協力した取組の推進などを求めていきます。また、先進事例に学ぶとともに、横浜の実情を踏まえ、最適な対応策を検討・実施し、市、事業者、関係機関等が一体となって「安全・安心対策の横浜モデル」を構築します。 (コラムここまで) (ウ)ギャンブル等の実施に関する状況  「横浜市娯楽と生活習慣に関する調査」の結果によると、初めてギャンブル等をした年齢は、20歳未満が15.2%、20歳代が28.4%となっており、回答者の4割以上が20歳代までにギャンブル等を始めています。 図表2-18:初めてギャンブル等をした年齢(n=1,263) (表ここから) 年齢 割合 20歳未満 15.2% 20歳代 28.4% 30歳代 5.4% 40歳代 2.5% 50歳代 1.3% 経験なし 47.2% 無回答 0.1% (表ここまで) 出展:横浜市「横浜市民に対する娯楽と生活習慣に関する調査」(令和元年度) (エ) ギャンブル等に関する相談状況  本市におけるギャンブル等に関する相談状況を見ると、こころの健康相談センターでは、平成29年5月より依存症相談窓口(依存症専門相談)を開設し、平成29年度以降は年間のべ100〜200件程度のギャンブル等に関する相談を受け付けています。  また、区役所では年間のべ110〜170件程度のギャンブル等に関する相談を受け付けています。 図表2-19:こころの健康相談センターにおけるギャンブル等に関する相談のべ件数(横浜市) (表ここから) 年度 件数 平成27年度 0件 平成28年度 電話相談4件 面接相談1件 総数5件 平成29年度 電話相談71件 面接相談52件 総数123件 平成30年度 電話相談118件 面接相談63件 総数181件 令和元年度 電話相談173件 面接相談42件 総数215件 ※相談窓口開設平成29年度以降 (表ここまで) 出典:本市資料 図表2-20:区役所におけるギャンブル等に関する相談のべ件数(横浜市) (表ここから) 年度 件数 平成27年度 面接相談19件 訪問相談21件 電話相談67件 総数107件 平成28年度 面接相談15件 訪問相談22件 電話相談79件 総数116件 平成29年度 面接相談45件 訪問相談19件 電話相談104件 総数168件 平成30年度 面接相談38件 訪問相談3件 電話相談76件 総数117件 令和元年度 面接相談32件 訪問相談8件 電話相談79件 総数119件 (表ここまで) 出典:本市資料 エ:その他の依存症に関連する状況 (ア) ゲーム利用に関する状況  「横浜市娯楽と生活習慣に関する調査」の結果によると、年齢が若いほど1日の平均ゲーム利用時間が長くなる傾向が見られます。 図表2-21:現在の年齢と、1日の平均ゲーム利用時間の関係 (表ここから) 現在の年齢(n=調査数) 1日の平均ゲーム利用時間 18〜19歳(n=33) 4時間以上18.2% 2時間以上~4時間未満33.3% 2時間未満36.4& 全くしない12.1% 20〜29歳(n=121) 4時間以上10.7% 2時間以上~4時間未満21.5% 2時間未満47.1% 全くしない20.7% 30〜39歳(n=199) 4時間以上4.5% 2時間以上~4時間未満12.5% 2時間未満41.7% 全くしない41.2% 40〜49歳(n=267) 4時間以上1.9% 2時間以上~4時間未満6.7% 2時間未満45.3% 全くしない46.1% 50〜59歳(n=261) 4時間以上1.5% 2時間以上~4時間未満3.5% 2時間未満28.0% 全くしない67.0% 60〜69歳(n=237) 2時間以上~4時間未満3.3% 2時間未満21.1% 全くしない75.5% 70〜79歳(n=145) 2時間以上~4時間未満3.5% 2時間未満8.3% 全くしない87.6% 無回答0.7% (表ここまで) 出典:横浜市「横浜市民に対する娯楽と生活習慣に関する調査」(令和元年度) 注:ゲームには、パソコン、ゲーム機、スマートフォン、携帯電話など使用するすべてを含む  また、国立病院機構久里浜医療センターが令和元年に実施した調査によれば、平日のゲーム使用時間が長い人ほど、身体に不調が現れてもゲームを続ける傾向が見られます。 図表2-22:ゲームが腰痛、目の痛み、頭痛、関節や筋肉痛などといった体の問題を引き起こしていても、ゲームを続ける人の割合 (表ここから) 男女別(n=調査数) 平日のゲーム使用時間 男性(n=2,546) 1時間未満4.4% 1時間以上2時間未満8.8% 2時間以上3時間未満14.5% 3時間以上4時間未満17.5% 4時間以上5時間未満23.7% 5時間以上6時間未満27.2% 6時間以上36.8% 女性(n=2,550) 1時間未満4.2% 1時間以上2時間未満5.0% 2時間以上3時間未満17.2% 3時間以上4時間未満29.5% 4時間以上5時間未満26.8% 5時間以上6時間未満19.4% 6時間以上50.0% (表ここまで) 出典:国立病院機構久里浜医療センター「ネット・ゲーム使用と生活習慣についてのアンケート」(令和元年) (イ)ネット利用に関する状況  「横浜市娯楽と生活習慣に関する調査」の結果によると、18〜19歳の人の21.2%、20〜29歳の人の14.9%が、1日に4時間以上、娯楽としてネットを利用していると回答しています。 なお、本市が平成30年度に実施した調査によると、18歳〜20歳代の人の49.0%が「SNSのない自分の生活は考えられない」との設問に対して「そう思う」と回答しています。 図表2-23:現在の年齢と、1日の平均ネット利用時間の関係 (表ここから) 現在の年齢(n=調査数) 1日の平均ネット利用時間 18〜19歳(n=33) 4時間以上21.2% 3時間以上~4時間未満9.1% 2時間以上3時間未満21.2& 1時間以上2時間未満36.4% 1時間未満6.1% 全くしない6.1% 20〜29歳(n=121) 4時間以上14.9% 3時間以上~4時間未満9.9% 2時間以上3時間未満18.2& 1時間以上2時間未満29.8% 1時間未満14.9% 全くしない12.4% 30〜39歳(n=199) 4時間以上5.5% 3時間以上~4時間未満5.5% 2時間以上3時間未満13.6& 1時間以上2時間未満22.6% 1時間未満32.2% 全くしない20.6% 40〜49歳(n=267) 4時間以上3.0% 3時間以上~4時間未満3.0% 2時間以上3時間未満7.9& 1時間以上2時間未満25.5% 1時間未満34.5% 全くしない25.8% 無回答0.4 50〜59歳(n=261) 4時間以上1.9% 3時間以上~4時間未満2.3% 2時間以上3時間未満2.3& 1時間以上2時間未満15.3% 1時間未満38.3% 全くしない39.5% 無回答0.4 60〜69歳(n=237) 4時間以上0.8% 3時間以上~4時間未満1.3% 2時間以上3時間未満6.3& 1時間以上2時間未満7.6% 1時間未満28.3% 全くしない55.7% 70〜79歳(n=145) 3時間以上~4時間未満0.7% 2時間以上3時間未満0.7& 1時間以上2時間未満17.9%全くしない74.5% (表ここまで) 出典:横浜市「横浜市民に対する娯楽と生活習慣に関する調査」(令和元年度) 注:ここでいう「ネット利用」は、娯楽として、SNSや動画サイト、ウェブサイト等の閲覧を行うことを指す 図表2-24:「SNSのない自分の生活は考えられない」に「そう思う」と回答した割合 (表ここから) 年代(n=調査数) 割合 18歳〜20歳代(n=204) 49.0% 30歳代(n=255) 17.3% 40歳代(n=374) 13.6% 50歳代(n=401) 12.2% 60歳代(n=375) 9.3% 70歳代以上(n=451) 6.2% (表ここまで) 出典:横浜市「日常生活の中での活動に関する調査」(平成30年度) (ウ)その他の依存症に関する相談状況  本市におけるゲーム障害を含むその他の依存症に関する相談状況を見ると、こころの健康相談センターでは、令和元年度において年間のべ200件程度のその他の依存症に関する相談を受け付けています。 また、区役所では令和元年度においてのべ35件の相談を受け付けています。 図表2-25:こころの健康相談センターにおけるその他の依存症に関する相談のべ件数 (表ここから) 年度 件数 平成29年度 電話相談52件 面接相談15件 総数67件 平成30年度 電話相談90件 面接相談64件 総数154件 令和元年度 電話相談159件 面接相談57件 総数216件 (表ここまで) 出典:本市資料 図表2-26:区役所におけるその他の依存症に関する相談のべ件数(横浜市) (表ここから) 年度 件数 平成29年度 0件 平成30年度 面接相談25件 訪問相談3件 電話相談56件 総数154件 令和元年度 面接相談12件 訪問相談4件 電話相談19件 総数35件 (表ここまで) 出典:本市資料 (2) 市民の認知度や地域の特徴など ア:依存症に関する認知度  本市が令和2年に実施した「ヨコハマeアンケート」(脚注12) (以下、「eアンケート」という。)の結果によれば、回答者の95%以上が、アルコール依存症・薬物依存症・ギャンブル等依存症について知っており、依存症に対する認知度は高いことがうかがえます。  他方で、「依存症になるのは自業自得だと思う」の質問については38.8%が、「治療しても依存症が回復することはない」の質問については24.2%が「そう思う」または「ややそう思う」と回答しており、依存症に関する正しい知識が浸透していないことがうかがえます。 図表2-27:知っている依存症 (表ここから)n=1,264 依存症 割合 アルコール依存症 98.7% 薬物依存症 95.8% ギャンブル依存症 96.6% いずれも知らない 0.7% その他 13.8% (表ここまで) 出典:ヨコハマeアンケート「依存症に対するイメージや知識に関するアンケート」(令和2年度) 図表2-28:依存症に対する認識 (表ここから) 認識 割合 依存症になるのは自業自得だと思う そう思わない10.2% あまりそう思わない12.9% どちらともいえない35.0% ややそう思う27.2% そう思う11.6% わからない2.1% 無回答0.9% 治療しても依存症が回復することはない そう思わない19.0% あまりそう思わない25.7% どちらともいえない26.8% ややそう思う17.7% そう思う6.5% わからない3.2% 無回答1.0% (表ここまで) 出典:ヨコハマeアンケート「依存症に対するイメージや知識に関するアンケート」(令和2年度) 脚注12「ヨコハマeアンケート」調査数:3,175人、回答:1,264人(回答率:39.8%)、期間:令和2年7月31日〜8月14日、方法:市内在住の15歳以上の登録メンバーによるインターネット調査 イ:地域別の人口の特徴 本市における地域別(注)の特徴についてまとめると、以下のようになります。 ● 東部においては、人口の増加が顕著に見られます。一方、世帯の特徴を見ると、独居世帯の割合が高く、被保護世帯数や外国人人口についても他の地域に比べると相対的に多いことがうかがえます。 ● 北部においては、人口が増加しているほか、人口に占める15歳未満の割合が他の地域に比べて高く、15歳未満の人口が比較的多いという特徴が挙げられます。一方で、一部の区において、自治会・町内会への加入率が相対的に低いという課題も見られます。 ● 南部については、人口が減少している中、人口に占める高齢者(65歳以上、以下同様)の割合、及び高齢者の独居世帯の割合が高い地域であるといえます。一方で、自治会・町内会への加入率が他地域に比べて高いことがわかります。 ● 西部については、南部と同様に高齢者の割合、及び高齢者の独居世帯の割合が他地域に比べて高いことがうかがえます。 (注)エリア別の区分は以下の通りです。 ・東部:鶴見区、神奈川区、西区、中区、南区 ・北部:港北区、緑区、青葉区、都筑区 ・南部:港南区、磯子区、金沢区、栄区 ・西部:保土ケ谷区、旭区、戸塚区、泉区、瀬谷区 図表2-29:地域別の人口等に関するデータ (表ここから) 区域 人口(令和2年1月1日現在) 人口増減率(平成28年1月1日現在→令和2年1月1日現在) 全人口に占める15歳未満の割合(令和2年1月1日現在) 全人口に占める高齢者の割合(令和2年1月1日現在) 横浜市全体 3,749,929人 0.7% 11.9% 24.6% 東部鶴見区 292,975人 2.7% 12.7% 21.1% 東部神奈川区 245,036人 2.4% 11.1% 21.6% 東部西区 103,985人 5.5% 11.0% 19.1% 東部中区 149,910人 0.8% 10.1% 23.7% 東部南区 195,482人 0.5% 10.0% 26.5% 北部港北区 353,620人 2.7% 12.2% 19.7% 北部緑区 182,495人 1.1% 12.7% 24.4% 北部青葉区 310,387人 0.2% 12.7% 21.8% 北部都筑区 212,642人 0.2% 15.2% 18.1% 南部港南区 213,751人 ▲0.8% 11.1% 28.5% 南部磯子区 166,347人 0.0% 11.8% 27.4% 南部金沢区 198,054人 ▲1.8% 11.1% 29.3% 南部栄区 119,612人 ▲2.0% 11.4% 31.2% 西武保土ケ谷区 205,939人 0.3% 10.8% 26.3% 西武旭区 245,127人 ▲0.8% 11.5% 29.9% 西武戸塚区 280,733人 2.0% 13.0% 25.6% 西武泉区 151,830人 ▲1.4% 11.8% 29.1% 西武瀬谷区 122,004人 ▲2.0% 11.9% 28.2% (表ここまで) 出展:横浜市「市・区の年齢別人口」 図表2-30:地域別の人口等に関するデータ:つづき (表ここから) 区域 世帯数(令和2年3月末現在) 全世帯数に占める独居世帯の割合(令和2年3月末現在) 全世帯に占める高齢者独居世帯の割合(令和2年3月末現在) 横浜市全体 1,813,405世帯 42.6% 15.2% 東部鶴見区 149,115世帯 48.2% 14.4% 東部神奈川区 127,338世帯 51.5% 13.9% 東部西区 58,282世帯 56.1% 13.1% 東部中区 87,100世帯 57.4% 18.5% 東部南区 109,088世帯 53.2% 18.5% 北部港北区 173,033世帯 45.4% 11.8% 北部緑区 82,538世帯 37.0% 13.8% 北部青葉区 136,038世帯 34.0% 12.4% 北部都筑区 87,993世帯 30.7% 11.0% 南部港南区 101,124世帯 38.2% 16.7% 南部磯子区 82,053世帯 42.8% 17.6% 南部金沢区 92,974世帯 38.5% 16.8% 南部栄区 55,644世帯 36.3% 17.1% 西武保土ケ谷区 101,965世帯 45.1% 16.5% 西武旭区 116,131世帯 39.1% 17.8% 西武戸塚区 127,018世帯 35.7% 15.0% 西武泉区 69,590世帯 35.5% 16.8% 西武瀬谷区 56,441世帯 37.3% 17.1% (表ここまで) 出典:横浜市「世帯人員別の世帯数」 図表2-31:地域別の人口等に関するデータ:つづき (表ここから) 区域 被保護世帯数(令和2年3月末現在) 自治会・町内会加入状況(加入率)(平成31年4月1日現在) 外国人人口(令和2年3月末現在) 横浜市全体 54,111世帯 72.4% 105,287人 東部鶴見区 5,228世帯 74.3% 14,002人 東部神奈川区 3,016世帯 68.6% 7,638人 東部西区 1,477世帯 64.3% 5,244人 東部中区 8,345世帯 63.2% 17,467人 東部南区 6,065世帯 76.3% 10,937人 北部港北区 2,835世帯 66.3% 7,086人 北部緑区 2,113世帯 73.7% 4,350人 北部青葉区 1,872世帯 72.4% 4,504人 北部都筑区 1,189世帯 61.4% 3,701人 南部港南区 2,345世帯 75.4% 2,839人 南部磯子区 2,295世帯 73.7% 5,172人 南部金沢区 1.678世帯 80.8% 3,110人 南部栄区 1,261世帯 81.6% 1,176人 西武保土ケ谷区 2,968世帯 75.0% 5,862人 西武旭区 3,544世帯 78.0% 3,248人 西武戸塚区 2,810世帯 71.7% 4,433人 西武泉区 2,393世帯 76.5% 2,516人 西武瀬谷区 2,677世帯 77.2% 2,002人 (表ここまで) 出典:横浜市「横浜市統計書」、横浜市「自治会町内会調査結果」、横浜市「外国人の人口」 2 本市及び関係機関、民間支援団体等における取組と状況 (1) 身近な支援者の取組と状況 ア:身近な支援者の分類 本市においては、依存症の本人や依存症が疑われる人、またはその家族等にとって身近な支援者となる様々な機関・団体が活動をしています。 こうした身近な支援者が依存症問題に対する理解と対応力を高め、専門的な支援者との連携を強化していくことが、効果的な依存症の予防・早期発見・早期支援に向けて極めて重要だと考えられます。 図表2-32:本市における身近な支援者(例) (表ここから) 分類 具体的な機関・団体 依存症に対する関わり 行政 保健所・区役所(高齢・障害支援課、生活支援課、こども家庭支援課、福祉保健課など)、児童相談所、消費生活総合センターなど ●貧困や虐待、DV、多重債務、健康問題等に関する行政の相談窓口として、一次相談から専門的な相談まで幅広く対応しています。 ●相談内容の背景に依存症の問題があった場合には、専門的な支援者へのつなぎを行っています。 福祉 精神障害者生活支援センター、基幹相談支援センター、地域ケアプラザ、発達障害者支援センター など。指定特定相談支援事業者、障害福祉サービス事業所など。居宅介護支援などの介護事業所。生活困窮者支援を行う事業者、保育所など ●要介護者や障害者、生活困窮者、子どもなどが地域生活を送る上で必要なケアやサポート、福祉サービスを提供しています。 ●サービスを提供する中で、支援対象者等が依存症の問題を抱えている場合には、専門的な支援者に関する情報提供などを行っています。 司法 法テラスや法律事務所、司法書士事務所、保護観察所、更生保護施設など。 ●法律相談等に対応する中で、依存症に起因する多重債務等の問題を抱える人へ、相談窓口の提供などを行っています。 ●また、保護観察所や更生保護施設は、薬物使用等で検挙された人が再び犯罪を繰り返すことのないよう、支援を行っています。 (表ここまで) 図表2-33:本市における身近な支援者(例):つづき (表ここから) 分類 具体的な機関・団体 依存症に対する関わり 医療(一般医療機関) 依存症の治療を標榜していない医療機関(内科、婦人科、精神科など) ●患者に依存症の問題が疑われる場合に、専門的な支援者に関する情報の提供やつなぎを行います。 ●また、疾病などを抱えながら依存症の回復に臨む患者に対し、専門的な医療機関や他の支援者と連携しながら各診療科の専門性を踏まえた医療を提供しています。 学校 小中学校や高等学校、専門学校、大学など。 ●各学校・教育機関の教育活動の中で、依存症の予防と正しい理解の促進に向けた教育・指導などを行っています。 ●様々な課題を抱える子どもに対し、保護者や他の支援者と連携しながらサポートを提供しています。 (表ここまで) イ:身近な支援者による依存症への相談対応の状況 (ア)地域ケアプラザ等におけるアルコール関連問題の相談対応の状況  身近な支援者による依存症関連の相談状況について、例えば、身近な支援者(地域ケアプラザ、精神障害者生活支援センター、基幹相談支援センター等)を対象として実施したアンケート(以下、「身近な支援者アンケート」という。)では、回答した124施設中116施設(93.5%)がアルコール関連問題の相談があったと回答しており、アルコール関連問題はこれらの一次相談支援機関に寄せられる相談の内容として珍しくない状況にあります。  また、同アンケートによれば、アルコール関連問題の相談において、相談者への他の社会資源に関する情報提供や外部機関との連携、内部でのカンファレンスを通じた対応策の検討などの取組が行われています。  他方、アルコール関連問題は、他の問題が併存するなど、相対的に支援における困難度が高いと感じる支援者が多い状況です。また、家族等からの相談が多いといった傾向が見られ、専門的な支援者への受診・相談勧奨を拒否する当事者も少なくない状況にあります。その結果、身近な支援者から専門機関へのつなぎを困難に感じる支援者が多い状況です。 表2-34:身近な支援者におけるアルコールの問題に関する相談の有無(n=124) あった(93.5%) なかった(6.5%) 出典:身近な支援者(地域ケアプラザ、精神障害者生活支援センター、基幹相談支援センター等)を対象とするアンケートより 図表2-35:相談対応にあたって困ること(複数回答・n=116) (表ここから) 困る事柄 割合 助言方法がわからない 21.6% 相談内容が不明瞭 13.8% 接触ができない 26.7% 関係が築きづらい 29.3% 受診勧奨がうまくいかない 51.7% 問題を否認する 8.6% 相談者・利用者とトラブルがある 2.6% 断酒が継続しない 39.7% 繰り返し相談が持ち込まれる 8.6% トラブル処理に追われる 12.9% 相談員の精神的負担が多い 28.4% 依存問題の話題を拒む 19.0% その他 19.0% (表ここまで) 出典:身近な支援者(地域ケアプラザ、精神障害者生活支援センター、基幹相談支援センター等)を対象とするアンケートより (イ)区役所のこども家庭支援課における薬物・ギャンブル等問題の相談対応の状況  市内18区のこども家庭支援課虐待対応チームを対象として実施したアンケート(以下、「こども家庭支援課アンケート」という。)によれば、回答した13区のうち約8割の区が子ども、あるいは家族等がギャンブル等の問題を抱えている事例に対応した経験があり、また、約9割の区が薬物の問題を抱えている事例に対応した経験があるとの結果が見られました(結果の詳細は本章第3節68ページ 図表2-61参照)。  また、薬物やギャンブル等の問題がある場合において、対応時に困ったこととして、本人の治療が継続しないこととの回答が多く挙げられています。 図表2-36:薬物やギャンブル等の問題があった際に対応に困ったこと(複数回答・n=12) (表ここから) 回答項目 回答数 回答割合 子どもとコンタクトがとりづらい 4 33.3% 子どもの生活状況が把握しづらい 7 58.3% 養育者とコンタクトがとりづらい 8 66.7% 相談できる支援者がいない 3 25.0% 治療が継続しない 11 91.7% 相談先がわからない 1 8.3% その他 3 25.0% (表ここまで) 出典:市内18区のこども家庭支援課虐待対応チームを対象とするアンケートより 注:回答を得られた13区のうち、保護者が薬物やギャンブル等の問題を抱えている事例に対応した経験がある12区の回答結果を集計 (2) 医療機関の取組と状況 ア:専門医療機関の現状  依存症の本人への支援においては、専門医療機関が大きな役割を果たしています。  専門医療機関とは、依存症にかかる所定の研修を修了した医師等が配置され、依存症に特化した専門プログラムを行うなど、依存症に関する専門的な医療を提供できる医療機関のことです。本市では、神奈川県とともに実施要綱に基づいて以下の6か所の医療機関を選定しています(うち市内3か所)。  これらの専門医療機関の中には、アルコール・薬物・ギャンブル等以外にも幅広い依存症の治療に対応している医療機関もあり、依存症に合併する精神疾患への対応や障害福祉サービス等と連携した支援なども行われています。 図表2-37:県内に立地する専門医療機関 (表ここから) 医療機関名 所在地 診療対象の依存症 地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立精神医療センター 横浜市港南区 アルコール健康障害/薬物/ギャンブル等 医療法人誠心会 神奈川病院 横浜市旭区 アルコール健康障害 医療法人社団祐和会 大石クリニック 横浜市中区 アルコール健康障害/薬物/ギャンブル等 学校法人北里研究所 北里大学病院 相模原市南区 アルコール健康障害/薬物/ギャンブル等 独立行政法人 国立病院機構 久里浜医療センター 横須賀市 アルコール健康障害 みくるべ病院 秦野市 アルコール健康障害/薬物 (表ここまで) 出典:神奈川県ホームページを一部改変 イ:依存症治療を行う医療機関における取組  本市が実施した「平成28年度調査」からは、専門医療機関以外にも依存症の治療・支援を行う医療機関が複数存在することがわかっています。診察内容等を見てみると、アルコールを中心として外来で対応をする医療機関が多い状況です。  外来対応を行う医療機関で提供されている依存症対応プログラムについては、「集団療法」(脚注13)、「個別療法」(脚注14)、「家族向け集団教育」(脚注15)、「コ・メディカルスタッフ(脚注16)相談」などが行われています。このうち、いずれの依存症においても「個別療法」が最も多く提供されており、その内容としては、「SMARPP」(脚注17)、「条件反射制御法」(脚注18)、「内観療法」(脚注19)などが挙げられます。  関係機関への紹介・連携の状況を見ると、「専門病院・専門クリニック」、「自助グループ」、「回復支援施設」、「弁護士」などが紹介・連携先として比較的多くなっています。  なお、紹介・連携先については、依存症の種類によりやや違いが見られ、アルコールの場合は、専門病院・専門クリニックが最も多く、薬物とギャンブル等での紹介先は、自助グループが最も多くなっています。 (脚注13)治療者と複数の患者が一緒に治療を行う方法。 (脚注14)治療者と患者が1対1で治療を行う方法。 (脚注15)病院・診療所が企画実施する、依存症者理解のための家族が参加する勉強会(家族教室)や、分かち合い。 (脚注16)医師以外の医療関係職種のこと。看護師や精神保健福祉士、理学療法士等のリハビリテーション専門職など。 (脚注17)SMARPP(スマープSerigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program:せりがや覚醒剤依存再発防止プログラム)とは、旧せりがや病院で開発され、全国に普及した薬物再使用防止プログラムのこと。 (脚注18)不適切な行動の根源となる欲求、好まない感情や感覚、パターン化された業務における不注意等を制御あるいは予防する治療方法。 (脚注19)世話になったこと、世話をして返したこと、迷惑をかけたことなどを思い出し、自らの態度や行動を観察、分析していく治療方法。 図表2-38:依存症の治療・支援を行う医療機関で提供されているプログラムの内容 (表ここから) プログラム 依存症の種類:アルコール(n=28)/薬物(n=16)/ギャンブル(n=15) 集団療法 25.0%/18,8%/13.3% 個別療法 60.7%/68.8%/73.3% 家族向け集団教育 14.3%/12.5%/13.3% コ・メディカルスタッフ相談 42.9%/50.0%/53.3% その他 39.3%/25.0%/20.0% (表ここまで) 出典:横浜市「平成28年度 横浜市における依存症対策の現状調査」 ※下記表は棒グラフの各数値が未記入なので表記不能 図表2-39:依存症の治療・支援を行う医療機関の紹介・連携先(依存症の種類別) (表ここから) 医療機関の紹介・連携先 依存症の種類:アルコール(n=31)/薬物(n=20)/ギャンブル(n=15) 専門病院・専門クリニック 自助グループ 回復支援施設 カウンセリング機関 保健所・福祉事務所 精神保健福祉センター 法テラス 弁護士 司法書士 保健観察所 その他 連携なし (表ここまで) 出典:横浜市「平成28年度 横浜市における依存症対策の現状調査」 ウ:その他の医療機関(一般医療機関)  ア及びイに記載した専門医療機関や依存症の治療・支援を行う医療機関以外にも、市内には多くの精神科や身体科の医療機関が立地しており、本市が公開している「横浜市内の病院・一般診療所・歯科診療所名簿」(令和2年10月1日現在)によれば、市内には病院が133か所、一般診療所が3,091か所あります。  このうち、依存症や物質への依存等により生じた健康障害の治療と関連性が強いと考えられる医療機関を見てみると、精神科を標榜している医療機関が356件(うち一般診療所297件)、内科を標榜している医療機関が2,078件(うち一般診療所1,956件)となっています。  これらの医療機関は専門医療機関や依存症の治療・支援を行う医療機関と比較して数が多く、日々の通院などを通じて依存症の自覚がない人などとも接する機会が少なくないものと推察されます。そのため、依存症の早期発見と専門医療機関をはじめとする専門的な支援者へのつなぎに向けた重要な役割を担っているものと考えられます。  また、アルコールや薬物の多量摂取等による救急搬送患者への対応を担う救急外来のある医療機関についても、回復の過程において専門的な支援者へとつなぐ役割が期待されます。  その一方、専門医療機関や依存症の治療・支援を行う医療機関以外の医療関係者においては、依存症に関する情報不足などから、必ずしも依存症の専門的な支援者等との連携が十分になされていないとの意見も聞かれます。例えば、本市が市内の救命救急センターに対して行ったヒアリングでは、搬送から退院までの短期間で本人への動機づけを行うことの難しさ、本人等が抱える生活困窮の問題、関係者の不在などの要因から、専門治療や支援へつなぐことが困難な様子がうかがえ、こうした問題への対応策としてスタッフへの研修の必要性が挙げられていました。 (3)民間支援団体等の取組と状況 ア:民間支援団体等の現状 (ア)回復支援施設の概況と活動内容について  回復支援施設とは、回復施設、リハビリ施設とも呼ばれ、施設ごとに様々なプログラムや支援メニューを実施し、依存症等からの回復を支援する施設のことを指します。  これらの施設のスタッフについては、依存症からの回復者が携わっていることも多く、回復者が施設長を務める施設も多くあります。  また、運営体制は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業所としての報酬を受けて運営する施設、本市が独自に助成している地域活動支援センターとして運営する施設、法人として独自の財源により運営している施設など多岐にわたり、依存症の本人が入所して共同生活を営む施設、通所によるプログラムを提供する施設など様々な支援が提供されています。  各回復支援施設の支援対象については、アルコール・薬物・ギャンブル等のいずれかの依存症に特化して支援を行う施設、複数の依存症や依存症全般に対応する施設があります。  本市が実施した依存症社会資源調査によれば、他の自治体と比較して市内には社会資源が相対的に多く集積しています。加えて、全国的に珍しい女性専用の回復支援施設も本市において活動しています。駅周辺など市内の比較的アクセスのよい場所で活動している団体も多く、施設数・活動の多様性・支援対象の広がり・アクセスのしやすさなどの総合的な観点から見て、本市の回復支援施設は当事者にとって利用しやすく、多様な選択肢を提供している状況にあると考えられます。  なお、各施設の分布を見ると、特に市内のうち東部や相模鉄道本線沿線に多く立地しています。 図表2-40:市内回復支援施設一覧 (表ここから) 団体名 施設名 対応する依存症(※)(アルコール/薬物/ギャンブル等/その他) 団体所在地 NPO法人RDP RDP横浜 アルコール◎/薬物◎/ギャンブル等◎/その他◎ 横浜市神奈川区松本町4‐28‐16 弘津ビル2F NPO法人あんだんて 女性サポートセンターIndah(インダー) アルコール◎/薬物◎/その他◯ 横浜市瀬谷区瀬谷4‐11‐16足立ビル1階 NPO法人ギャンブル依存ファミリーセンターホープヒル ホープヒル アルコール◯/薬物◯/ギャンブル等◎/その他◯ 横浜市旭区東希望が丘133-1第3コーポラスC棟508号室 NPO法人市民の会 寿アルク 第1アルク・デイケア・センター松影、アルク・ハマポート作業所、アルク翁、第2アルク生活訓練センター、第2アルク地域活動支援センター、アルク・ヒューマンサポートセンター アルコール◎/薬物◯/ギャンブル等◯ 横浜市中区松影町3-11-2三和物産松影町ビル2F NPO法人ステラポラリス ステラポラリス アルコール◎/薬物◯/ギャンブル等◎/その他◯ 横浜市保土ケ谷区宮田町1-4-6 カメヤビル2F NPO法人ダルクウィリングハウス ダルクウィリングハウス 薬物◎/その他◯ 住所は非公開 NPO法人日本ダルク神奈川 日本ダルク神奈川 アルコール◯/薬物◎/ギャンブル等◯/その他◯ 横浜市中区北方町1-21 NPO法人ヌジュミ デイケアぬじゅみ アルコール◯/ギャンブル等◎/その他◯ 横浜市保土ケ谷区西谷4丁目1番6号 西谷産業ビル1階 NPO法人BB 地域活動支援センターBB アルコール◎/薬物◯/ギャンブル等◎/その他◯ 横浜市南区東蒔田町15-3YTCビル1階 一般社団法人ブルースター横浜 ブルースター横浜 ギャンブル等◎/その他◯ 横浜市金沢区能見台通3-1アサヒビル201号室 NPO法人横浜依存症回復擁護ネットワーク(Y−ARAN) YRC横浜 アルコール◎/薬物◎/ギャンブル等◎/その他◎ 横浜市磯子区下町12-14 NPO法人横浜ダルク・ケア・センター 横浜ダルク・ケア・センター アルコール◯/薬物◎/ギャンブル等◯/その他◯ 横浜市南区宿町2-44-5 NPO法人横浜マック 横浜マック デイケアセンター アルコール◎/薬物◎/ギャンブル等◯ 横浜市旭区本宿町91-6 株式会社わくわくワーク大石 わくわくワーク大石 アルコール◎/薬物◎/ギャンブル等◎/その他◯ NPO法人ワンデーポート ワンデーポート ギャンブル等◎/その他◯ 横浜市瀬谷区相沢4-10-1 (表ここまで) ※主たる支援対象とする依存症は◎、それ以外に対応している依存症については○を記載 ※下記図表はマップ図なので表記不能 図表2-41:市内回復支援施設の分布状況 ※所在地が公表されている団体のみ掲載 (イ)自助グループの概況と活動内容について  自助グループとは、なんらかの障害、問題、悩みなどを抱えた人たち同士が出会い、ミーティングや情報交換を通じ、相互に援助しあうことで、その問題からの回復を目指すことを目的とした集まりを指します。また、自助グループの中には、互いに実名を伏せて匿名で関わりあうものもあり、匿名グループ(Anonymousアノニマス)という言い方がなされることもあります。  これらの自助グループは、アルコール・薬物・ギャンブル等それぞれの依存症ごとに存在しており、依存症の本人を対象とする団体のほか、その家族を対象とする団体もあります。  平成28年度調査によれば、市内では9団体の自助グループが活動しています。また、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況を踏まえ、一部ではテレビ・Web会議システムを活用したオンラインによるミーティングを開催している団体もあります。  こうした市内の団体の中には、AA(エーエー)やアラノンといった海外で設立されたグループの日本版や、全国規模の団体の横浜支部などもあり、それぞれの団体の活動理念を踏まえた、独自のミーティング手法を用いた自助活動が進められています。 図表2-42:市内自助グループ一覧 (表ここから) 依存症区別 団体名 対象(本人/家族) 団体情報(本部所在地等) アルコール依存症 AA(エーエー)(アルコホーリクス・アノニマス) 本人 AA日本ゼネラルサービス:東京都豊島区池袋4-17-10土屋ビル3F/AA関東甲信越セントラルオフィス:東京都豊島区南大塚3-34-16 オータニビル3F アルコール依存症 アラノン(NPO法人アラノン・ジャパン) 家族 アラノン・ジャパン:横浜市神奈川区白幡上町19-13 アルコール依存症 横浜断酒新生会(一般社団法人神奈川断酒連合会) 本人/家族 公益社団法人全日本断酒連盟:東京都千代田区/一般社団法人 神奈川県断酒連合会:横浜市港南区 薬物依存症 NA(エヌエー)(ナルコティクス アノニマス) 本人 NA日本リージョン・セントラル・オフィス:東京都北区赤羽 1-51-3-301 薬物依存症 ナラノン(NPO法人ナラノンジャパンナショナルサービス) 家族 ナラノンファミリーグループジャパン・ナショナルサービスオフィス:東京都豊島区西池袋2-1-2 島幸目白ピソ2-C 薬物依存症 NPO法人横浜ひまわり家族会 家族 横浜市港北区鳥山町1752 障害者スポーツ文化センター 横浜ラポール3階 ギャンブル等依存 GA(ジーエー)(ギャンブラーズ・アノニマス) 本人 GA日本インフォメーションセンター:神奈川県大和市大和東3-14-6-101 ギャンブル等依存 ギャマノン(一般社団法人ギャマノン日本サービスオフィス) 家族 ギャマノン日本サービスオフィス:東京都豊島区東池袋2-62-8 BIGオフィスプラザ池袋501号 ギャンブル等依存 NPO法人全国ギャンブル依存症家族の会 家族 東京都新宿区矢来町131番地 (表ここまで) (4)本市における取組と状況  本市においては、実施要綱に基づく依存症相談拠点であるこころの健康相談センターと各区役所の精神保健福祉相談を中心に、依存症の本人や家族等の個々の状況に合わせ、関係機関と連携して支援をしています。また、依存症の本人等に対する支援においては、個別支援での連携だけではなく、教育・青少年、生活困窮、保健・医療、消費経済など、様々な関係部署と連携し、啓発や相談体制の充実を図りながら依存症対策に向けた全庁的な取組を展開しています。 図表2-43:本市における依存症対策の取組体制 (図表ここから) 依存症対策に向けた全庁的な取組 こころの健康相談センター ・依存症専門相談拠点 ・市内関連機関とのネットワークづくり ・調査研究 区役所 精神保健福祉相談 ・相談支援 ・地域との連携 依存症にかんれんする施策を実施する部署 身近な支援者(行政) (図表ここまで) ア:こころの健康相談センターによる取組  本市こころの健康相談センター(精神保健福祉センター)は、精神保健及び精神障害者の福祉に関する知識の普及を図り、調査研究、並びに複雑困難な相談指導事業を行うとともに、各区福祉保健センターをはじめ、他の精神保健福祉関係機関に対し、技術援助を行う機関であり、本市における精神保健及び精神障害者の福祉に関する総合的技術センターとして、地域精神保健福祉活動の拠点となる機関です。  こころの健康相談センターでは、地域の関係機関と連携しながら、依存症に悩む本人や家族等が必要な支援につながる包括的な支援に向けて、依存症相談窓口として個別相談を実施するとともに、回復プログラムや家族教室、依存症に関する普及啓発や研修等の事業を展開しています。  令和2年3月には、実施要綱に基づく依存症相談拠点に指定されました。 図表2-44:こころの健康相談センターの依存症対策事業の実施内容 (表ここから) 事業の種類 事業内容 依存症相談窓口 ●専門の相談員が依存症の本人や家族、身近な人からの相談に対応。 回復プログラム ●依存症からの回復を目指す人を対象に、回復プログラムを提供。依存症のメカニズムや再発のサイン・対処法について依存症の本人と考えるとともに、回復へのきっかけづくりの支援や地域の民間支援団体等の相談先を紹介 家族教室 ●家族が依存症について学び、家族の対応方法・回復について考える機会を提供。●市内の医療機関、回復支援施設などの民間支援団体等の情報を提供。 普及啓発 ●依存症に関する正しい知識を広め、偏見・差別を解消するために啓発活動を実施。●啓発週間に合わせ、広報よこはまでの周知、市民向けセミナーの開催、リーフレットの作成・配布などを実施。 支援者研修 ●依存症の本人や家族の相談・支援にあたる地域の支援者を対象に研修を実施。 連携会議 ●行政、医療、福祉・保健、司法などの関係機関と連携会議を開催し、依存症対策に関する情報や課題の共有を実施。 民間団体支援 ●市内で依存症に関する問題に取り組む民間支援団体等に、相談活動や講演会などの事業にかかる費用の一部を補助。 その他 ●社会資源に関する実態調査や国の行う研究事業等への協力。 (表ここまで) (コラムここから) コラム・依存症相談拠点について  実施要綱においては、全国の都道府県及び指定都市にアルコール健康障害、薬物依存症、ギャンブル等依存症に関する相談の拠点を設置し、専門の相談窓口の開設及び関係機関との連携などを進めることが求められています。  本市においては、これまで依存症対策において中心的な役割を担ってきたこころの健康相談センターを、令和2年3月に依存症相談拠点とし、地域の関係機関との連携のさらなる強化を図り、また、図表2-44に記載した事業を通じ、依存症に関する包括的な支援の提供を進めています。 (コラムここまで) イ:区役所 精神保健福祉相談による取組 各区役所の高齢・障害支援課の精神保健福祉相談では、精神面の不調や疾患は全年齢層で起こり得ることから、学齢期、思春期から高齢者まで幅広い対象者へ支援を行っています。また、支援対象は、依存症の本人や家族等といった個別支援だけではなく、当事者や家族などへの集団援助、地域のネットワークの構築といった地域支援等があります。個別支援については、即応が求められる危機介入、地域生活を支えるサービス利用に関する支援、就労を目指す人への支援等の様々な業務を行っています。 また、依存症対策の取組例としては、家族支援のための取組(アディクション家族教室など)、酒害相談員を対象とした研修への参加、一般の市民を対象とした講演会・講座などそれぞれの区の状況に応じた取組を実施しています。 さらに、依存症に起因すると考えられる福祉課題への取組を進めている区内の関係課とも、連携して複合的な問題に対応しています。 図表2-45:区役所 精神保健福祉相談による取組(実績は令和2年3月時点) (表ここから) 取組の種類 取組例 アディクション 家族教室 ●家族同士の近況報告と、講師活用による学習会と区からの情報提供を行う。計13区で実施(複数区での合同開催含む) 酒害相談員研修会への参加 ●各地区で開催されている酒害相談員研修会に区職員が参加(13区で実施) 講演会・講座の開催 ●飲酒と心身の健康に関する講座の開催 回復支援施設との連携 ●区内にある回復支援施設が開催する研修会・講座や運営委員会に参加 (表ここまで) ウ:区役所のその他の部署による取組  区役所では関係各課(高齢・障害支援課、生活支援課、こども家庭支援課、福祉保健課等)において、日々の業務の中で依存症に起因すると考えられる福祉課題への対応を行っています。  例えば、複数区の生活支援課へのヒアリングやこども家庭支援課アンケートによれば、生活保護受給者や子どもへの虐待が疑われる事例において、支援対象者や保護者が依存症の問題を抱えていると疑われる場合が少なくないという結果が出ています。  そうした依存症に起因すると考えられる福祉課題を含む複合的な問題について、区内の複数部署が連携して対応しています。 エ:依存症関連施策を実施する部署での取組 依存症関連施策を実施する部署では、主に以下のような取組を実施しています。 図表2-46:依存症関連施策を実施する部署における依存症関連の取組 (表ここから) 部署 対象 実施内容 健康福祉局 生活支援課 アルコール、薬物、ギャンブル等 ●生活保護受給者や生活困窮者に対する相談支援、リーフレットの配布等 健康福祉局 医療安全課 薬物 ●薬物乱用防止キャンペーンin横濱 市民(特に若者)に対する薬物乱用防止啓発を目的として、薬物に関する正しい知識と危険性を発信する啓発イベント等を実施 ●薬物乱用防止指導者研修会 青少年に対する薬物乱用防止啓発の推進を目的として、薬物乱用防止啓発を担当する教諭向けの研修会を実施 健康福祉局 保健事業課 アルコール ●生活習慣改善相談 ●重症化予防事業(個別支援、集団支援) ●区民まつりや健康づくり関連イベントなどでの普及啓発 健康福祉局 保険年金課 薬物 ●国民健康保険加入の被保険者で重複頻回受診者に対して、文書通知等にて適正受診の指導 こども青少年局 青少年育成課 薬物、ゲーム ●(公財)よこはまユースにより、子ども・若者を取り巻く課題(薬物、インターネット等)解決に向けた取組を促すため、地域で開催される講座に講師を派遣する「子ども・若者どこでも講座」を実施 教育委員会事務局 健康教育課 アルコール、薬物 ●薬物乱用防止教室 ●薬物乱用防止キャンペーンin横濱(健康福祉局医療安全課主催) ●薬物乱用防止指導者研修会(健康福祉局医療安全課と共催) ●学習指導要領に基づき保健学習において、小学6年、中学3年、高校1年もしくは2年で薬物、飲酒、喫煙の影響等について学習 (表ここまで) 図表2-47:依存症関連施策を実施する部署における依存症関連の取組(つづき) 部署 対象 実施内容 政策局 男女共同参画推進課 アルコール、薬物、ギャンブル等 ●男女共同参画センターによる心とからだと生き方の総合相談の実施 * 男女共同参画センターによる自助グループ支援 経済局消費経済課 ギャンブル等 ●ホームページに消費者庁作成のギャンブル等依存症に関する情報を掲載 ●ギャンブル等依存症対策に関する啓発ポスターの掲示 総務局 職員健康課 アルコール ●市職員のアルコール依存症に関する相談対応 ●責任職向けテキストによる周知 3 計画課題の整理 (1)課題導出の流れ 本計画では、関係者が取り組むべき施策の方向性を検討するため、以下のア〜ウを実施し、一次支援から三次支援における課題を抽出・整理しました。 なお、ここでいう一次支援・二次支援・三次支援の定義は以下の通りです。 (囲みここから) ●一次支援:依存症の予防に向けた普及啓発や偏見解消に向けた理解促進の取組をいう。 ●二次支援:依存症の早期発見・早期支援に向けた取組、依存症の支援につながっていない人、他の支援を受けている人で依存問題を抱えている人への支援に向けた取組などをいう。 ●三次支援:依存症の本人やその家族等の回復を支えていくための取組をいう。また、民間支援団体等や医療機関の活動支援なども含む。 (囲みここまで) (イメージ図ここから)ピラミッド図 頂点:三次支援(回復支援)/対象:依存症からの回復段階にある人 中段:二次支援(早期発見・早期支援)/対象:依存症の本人・家族等、依存症の疑いがありつつも支援につながっていない人 底辺:一次支援(予防・普及啓発)/対象:市民全体+依存症リスクの高い人 (イメージ図ここまで) ※一般的に予防医学等で、一次「予防」、二次「予防」、三次「予防」という用語が用いられます。今回用いている一次「支援」、二次「支援」、三次「支援」もほぼ同じ意味で使用していますが、回復のために努力を続けている本人や家族等へ、より肯定的な表現となるよう、「支援」という用語を使用しています。 ア:依存症に関連する課題や社会資源状況の把握に向けた各種実態調査の実施  本市における専門的な支援者や身近な支援者の取組の現状や課題を把握することを目的として、以下の調査を実施しました。 (囲みここから) (ア)関係者へのヒアリング等 ●市内回復支援施設ヒアリング ●市内18区のこども家庭支援課虐待対応チームを対象とするアンケート(こども家庭支援課アンケート) ●身近な支援者(地域ケアプラザ、精神障害者生活支援センター、基幹相談支援センター等)を対象とするアンケート(身近な支援者アンケート) ●横浜市立大学附属市民総合医療センター、区役所の生活保護受給者を担当するケースワーカーを対象とするヒアリング (イ)各種実態調査等 ●本市及びその周辺地域を対象として、依存症対策に関係する社会資源の所在・活動内容等について調査した「平成28年度 横浜市における依存症対策の現状調査」(平成28年度調査) ●全国の民間支援団体等を対象として、活動内容や課題について調査した「依存症社会資源調査」(令和元年度) ●市内の回復支援施設の利用経験者及びスタッフ等、計43名に対しインタビュー調査を実施した「令和2年度 依存症回復支援施設利用者の実態調査」(回復支援施設利用者調査)(横浜市立大学へ委託) ●市内在住の15歳以上の登録メンバーを対象に、依存症に対するイメージや知識について尋ねた「ヨコハマeアンケート」(令和2年度) (囲みここまで)  また、上記に加え、都市整備局が令和元年度に実施した「横浜市民に対する娯楽と生活習慣に関する調査」の結果についても再分析を行い、課題導出のために活用しました。 イ:有識者や民間支援団体等の関係者による検討部会・連携会議の開催  依存症領域における学識経験者や、依存症の本人への支援等を行っている団体・家族会の関係者などから構成される検討部会及び連携会議(回復支援施設や自助グループ等の民間支援団体等、行政、医療・福祉、司法等の関係機関等の幅広い関係者で構成される会議)における意見・指摘事項などから、課題の収集を行いました。 ウ:国や県による調査や政策資料に関する情報収集の実施  国や神奈川県における依存症に関する調査研究や政策資料、他自治体の関連計画などを対象として、本計画で解決に取り組むべき課題に関する情報収集を実施しました。 図表2-48:課題抽出・整理プロセス (図ここから) 各種実態調査/検討部会・連携会議/国や県によるちょうさや制作資料に関する情報収集 → 本計画における課題の抽出・整理 (図ここまで) (2)本市の依存症対策における課題の設定 (1)に記載したプロセスを通じ、一次支援から三次支援における計画課題を整理し、12の「課題」を設定しました。12の課題については、以下の通りです。 図表2-49:本市の依存症対策における課題 (表ここから) フェーズ 課題 一次支援 1.ライフステージに合わせた切れ目ない依存症に関する情報提供・啓発 2.特に依存症のリスクが高まる時期に重点化した普及啓発 3.依存症に関する基本知識の普及啓発 二次支援 4.依存症の本人や家族等が早期に適切な支援につながるための普及啓発 5.依存症の複合的な背景を踏まえた重層的な早期支援体制の構築 6.身近な支援者等から専門的な支援者へ円滑につなぐ取組 7.専門的な支援者や家族等への支援 三次支援 8.支援団体ごとの特色を生かし、多様なニーズに対応するための情報共有 9.支援者によるアセスメント力向上 10.専門的な支援者等が継続的に活動するための支援 11.様々な支援ニーズに取り組む民間支援団体等の運営面等の課題への対応 12.回復段階において新たに顕在化する課題への対応 (表ここまで) (3)課題の具体的内容 ア:一次支援における課題 @ライフステージに合わせた切れ目ない依存症に関する情報提供・啓発 (囲みここから) 課題の具体的内容】 ●早い時期(学齢期)からの普及啓発 ●幅広い年齢層(成人、高齢者含む)への普及啓発 ●幅広い支援者と連携した啓発の取組 ●ゲーム障害を含む、依存対象と出会う時期に応じた正しい知識の普及啓発 (囲みここまで) 【早い時期(学齢期)からの普及啓発】 【幅広い年齢層(成人、高齢者含む)への普及啓発】  飲酒による身体的な悪影響が大きい未成年者への飲酒防止教育を始め、学齢期からアルコール・薬物・ギャンブル等の総合的な依存症に関する普及啓発を行い、心身に及ぼす影響を正しく認識する必要があります。  また、eアンケートでは、「依存症になるのは自業自得だと思う」という質問に対し、「そう思う」、「ややそう思う」と回答した人が38.8%であり、依存症についての誤解や偏見が一定程度あると考えられ、社会全体に正しい理解を浸透させることで、必要な人が適切な支援につながりやすくするためにも、学齢期から普及啓発していくことが必要です。  アルコール・薬物・ギャンブル等の依存症は、決して特定の世代だけが直面する特殊な問題ではありません。子どもから高齢者まで、誰もが直面する可能性のある問題です。  予防を進めていくためには、幼年期・児童期・青年期・壮年期・老年期といったライフステージにある様々な世代に対し、適切な情報提供や普及啓発を切れ目なく行うことが必要と考えられます。 図表2-50:依存症に対する認識(再掲) (表ここから) 認識 割合 依存症になるのは自業自得だと思う そう思わない10.2% あまりそう思わない12.9% どちらともいえない35.0% ややそう思う27.2% そう思う11.6% わからない2.1% 無回答0.9% 治療しても依存症が回復することはない そう思わない19.0% あまりそう思わない25.7% どちらともいえない26.8% ややそう思う17.7% そう思う6.5% わからない3.2% 無回答1.0% (表ここまで) 出典:ヨコハマeアンケート「依存症に対するイメージや知識に関するアンケート」(令和2年度) 【幅広い支援者と連携した啓発の取組】  ライフステージの移行に伴い、周りの環境も変化することがあります。  そのため、ライフステージの移行に応じた切れ目ない依存症啓発を進めていく上では、小中学校、高等学校、大学などの教育機関、地域の大人や団体、職場、介護や障害福祉の相談支援機関、かかりつけ医をはじめとする一般医療機関といった、様々な団体・機関と連携した取組が求められます。 【ゲーム障害を含む、依存対象と出会う時期に応じた正しい知識の普及啓発】  アルコールや薬物、ギャンブル等の依存症については、それぞれ依存対象と出会う時期に違いが見られます。例えば、アルコールやギャンブル等については就職や大学入学などを迎える18歳〜20歳前後に出会い、未成年飲酒等につながる可能性が高く、大学や職場と連携した普及啓発を行うことが考えられます。  また、近年関心の高まっているゲーム障害では、就学前や学齢期などの早い段階で依存対象に出会うため、小中学生などを対象とした啓発が求められます。  依存症の予防に向けては、こうした依存対象ごとのリスクが高まる時期の違いなどを踏まえ、情報提供の媒体あるいは提供する情報の内容を変化させていくなど、効果的な啓発活動が求められます。 A特に依存症のリスクが高まる時期に重点化した普及啓発 (囲みここから) 【課題の具体的内容】 ●ライフイベントの発生に合わせた正しい知識の普及啓発 (囲みここまで) 【ライフイベントの発生に合わせた正しい知識の普及啓発】  アルコール・薬物・ギャンブル等の依存症となる原因には様々なものがあります。依存症からの回復段階にある人を対象として実施したヒアリング調査(以下、「回復支援施設利用者調査」という。)によれば、依存症になったきっかけとして、保護者の早逝、離婚などのライフイベントや精神疾患の発症(うつ病等)などが挙げられていました。  また、eアンケートによれば、「依存症は誰でもかかる病気である」という項目について、81.6%が「そうだと思う」と回答している一方、「あなたは今後、ご自身に「アルコール」の問題(依存症)が起こるかもしれないと心配になることはありますか」という設問項目について「非常に心配だ」と「やや心配だ」とする回答者は9.1%となっており、同様の設問項目について、薬物は2.9%、ギャンブル等は3.4%となっています。  依存症の予防においては、上記の調査結果で示されているようなライフイベントに起因するなど、誰もが依存症になる可能性がある点を踏まえ、当該ライフイベントの手続きや相談に関わる機関・団体と連携しつつ、依存症を自分自身の問題として捉えるための正しい知識の普及啓発を進めていくことが求められます。 図表2-51:依存症との関係が推察されるライフイベント(例) (表ここから) * 保護者の早逝 * 離婚 * 精神疾患の発症(うつ病等) (表ここまで) 出典:横浜市「回復支援施設利用者調査」(令和2年度) 図表2-52:依存症に対して回答者自身がそうだと思う項目について (表ここから) 項目 割合 依存症は誰でもかかる可能性がある病気である 81.6% お酒を長年にわたって多量に飲む生活を続けると眠りの質は悪化する 47.8% 医師から処方される薬や市販薬でも依存症になる可能性がある 53.7% ギャンブル等の問題を抱える人の多くがうつ状態になっている 28.8% 依存症の結果生じたトラブル(借金・仕事の欠勤など)は家族が対処すべきである 15.3% 医療機関や家族会などでは本人が居なくても依存症のことを相談することができる 58.2% ※n=1.264 (表ここまで) 出典:ヨコハマeアンケート「依存症に対するイメージや知識に関するアンケート」(令和2年度) 図表2-53:自身の依存症の問題に対する心配の有無 (表ここから) 依存症区別 心配の有無(%) アルコール 非常に心配だ(1.3%) アルコール やや心配だ(7.8%) アルコール どちらともいえない(7.7%) アルコール あまり心配でない(22.4%) アルコール 全く心配していない(59.7%) アルコール すでに起きている(0.2%) アルコール 回答したくない(0.5%) アルコール 無回答(0.4%) 薬物 非常に心配だ(1.0%) 薬物 やや心配だ(1.9%) 薬物 どちらともいえない(4.2%) 薬物 あまり心配でない(21.4%) 薬物 全く心配していない(70.4%) 薬物 すでに起きている(0.2%) 薬物 回答したくない(0.5%) 薬物 無回答(0.4%) ギャンブル等 非常に心配だ(1.3%) ギャンブル等 やや心配だ(2.1%) ギャンブル等 どちらともいえない(4.7%) ギャンブル等 あまり心配でない(22.5%) ギャンブル等 全く心配していない(68.5%) ギャンブル等 回答したくない(0.5%) ギャンブル等 無回答(0.4%) ※n=1,264 (表ここまで) 出典:ヨコハマeアンケート「依存症に対するイメージや知識に関するアンケート」(令和2年度) (コラムここから) コラム・新型コロナウイルス感染症の依存症への影響  世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)は、我が国においても多くの人々の生活に大きな影響を及ぼしました。新型コロナがもたらした影響の中には、外出自粛に伴う景気の悪化、企業等の業績不振に伴う失業の増大、他者と触れ合う機会の減少など様々なものが挙げられます。  現在、新型コロナと依存症との関連性に関するエビデンス等は示されていませんが、計画素案の作成プロセスにおいては、これまで活発に社会生活を営んでいた人たちが、依存症になる事例が増えてくるのではないかとの意見が医療関係者から聞かれました。  具体的には、様々なリスク要因を持つ人が、失職などにより生活が激変し、様々な苦境にさらされる中で、飲酒量が増えるなどして、数年かけて依存問題が出てくるのではないかとの指摘です。  上記の意見を踏まえれば、新型コロナの感染拡大による依存症への影響は、時間をかけて顕在化してくることが予想されます。 (コラムここまで) B依存症に関する基本知識の普及啓発 【課題の具体的内容】 ●依存症の発症リスクが高い生活習慣等についての啓発 ●依存症に対する誤解・偏見の解消に向けた普及啓発 ●一般市民に対する専門的な医療機関や民間支援団体等の活動内容の周知 【依存症の発症リスクが高い生活習慣等についての啓発】 回復支援施設利用者調査によれば、家族や身近な人に依存症の問題があった場合など、特に依存症の発症リスクが高まる環境について、一定の傾向が見られました。 また、一般に男性と比較して女性は、習慣的な飲酒からアルコール依存症に至るまでの期間が短く、男性の場合約20〜30年かかるのに対し、女性の場合はその半分程度の期間であるとされています(脚注20)。本市では、生活習慣病のリスクを高める量の飲酒をしている女性の割合が全国と比較しても高い状況にあります。  依存症の予防を効果的に行っていくためには、こうした発症リスクが相対的に高い人に届くよう、重点的な情報提供や普及啓発などを行うことが必要と考えられます。 脚注20:厚生労働省「生活習慣病予防のための健康情報サイト」 図表2-54:依存症との関係が推察される環境(例) (表ここから) * 家庭環境(家族にアルコールの問題のある人や、ギャンブル等をしていた人がいた等) * 生育歴(虐待や育児放棄を受けた経験、保護者への不信感や恨み、コンプレックス等) * 保護者や配偶者との共依存関係 (表ここまで) 出典:横浜市「回復支援施設利用者調査」(令和2年度) 【依存症に対する誤解・偏見の解消に向けた普及啓発】 【一般市民に対する専門的な医療機関や民間支援団体等の活動内容の周知】  eアンケートでは、アルコール・薬物・ギャンブル等の依存症については、95%以上の認知度はあるものの、その特徴について十分に理解されていない点も見受けられました。依存症に対する理解が進んでいないことで、社会全体から依存症への偏見や差別意識に基づく否定的な考え方・接し方、いわゆる「スティグマ」が生じ、依存症からの回復の大きな障害となります。周囲からのスティグマにさらされ続けることは、自己肯定感や自尊感情を損ねる恐れがあり、依存症からの回復を阻害するリスクがあると考えられます。また、依存症の本人が依存症に対する誤解や偏見を持っている(セルフスティグマ)と、必要な相談・支援につながることや回復への障害にもなる可能性も推察されるため、依存症に対する正しい知識の普及啓発を進めて、誤解や偏見の解消を図ることが必要です。  また、eアンケートによれば、「もし身近に依存症の人や依存症ではないかと思う人がいたり、あなた自身に『アルコール』・『薬物』・『ギャンブル等』の問題が起こった場合、誰か(どこか)に相談しようと思いますか」という質問に「相談しようと思う」と回答した人のうち、「どの機関に相談しようと思いますか」という質問への回答として、「依存症の支援を行っている民間の施設」は14.3%、「自助グループ」は10.5%と低くなっています。また、民間支援団体等に対するヒアリングでは、主催する市民向け講座において参加者の確保に苦慮しているとの意見が見られました。  この調査結果から、市民における依存症に対する理解や民間支援団体等の活動内容に対する理解が十分に進んでいないものと考えられます。  他方、同じくeアンケートでは、依存症について「自助グループの集まり」や「当事者の体験談」、「家族会」、「専門家」から情報を得たり参加したことがあると回答した人は、「テレビ番組」、「本・新聞・インターネット」、「広報物」から情報を得ていると回答した人に比べ、「依存症になるのは自業自得だと思わない」「あまり思わない」とする回答の割合が高くなっています(図表2-55の破線部参照)。  これらの調査結果を踏まえれば、スティグマを防ぎ、依存症の本人等が必要な支援につながることを促進するため、依存症の支援者や当事者による講演などを通じた、市民全体を対象とした依存症そのものの理解や民間支援団体等の活動内容の理解に向けた啓発活動が必要だと考えられます。   さらに、eアンケートの結果からは、依存症について悩んだ時の相談先として「医療機関(かかりつけの医師・内科)」と回答した人が52.5%となったほか、「地域ケアプラザ」は7.0%、「精神障害者生活支援センター」は6.2%となっており、身近な支援者への依存症に関する普及啓発も必要であると考えられます。また、精神保健福祉相談を有する「区役所」を相談先として選択した回答は14.8%にとどまっており、相談先としての区役所の役割を積極的に啓発していくことも必要であると考えられます。 図表2-55:依存症に関する情報源と自身の「依存症になるのは自業自得だと思う」という考え方との関係(クロス集計結果) (表ここから) Q2 アルコール・薬物・ギャンブル等の依存症について、あなたが情報を得たり、参加したことがあるものを選択してください。(複数回答可) Q14 「依存症になるのは自業自得だと思う」という考えについて、あなたはどう思いますか。(単一選択) 情報収集・参加グループ等 依存症に対する考え 自助グループ(依存症の当事者による自主運営グループ)の集まり)n=90 依存症になるのは自業自得だと思わない(23.3%) 依存症になるのは自業自得だとあまり思わない(13.3%) どちらともいえない(33.3%) 依存症になるのは自業自得だとやや思う(22.2%) 依存症になるのは自業自得だと思う(6.7%) わからない(1.1%) 無回答(0.0%) 当事者の体験談を聞く講演会(n=74) 依存症になるのは自業自得だと思わない(20.3%) 依存症になるのは自業自得だとあまり思わない(17.6%) どちらともいえない(28.4%) 依存症になるのは自業自得だとやや思う(25.7%) 依存症になるのは自業自得だと思う(8.1%) わからない(0.0%) 無回答(0.0%) 家族会(n=58) 依存症になるのは自業自得だと思わない(27.6%) 依存症になるのは自業自得だとあまり思わない(12.1%) どちらともいえない(32.8%) 依存症になるのは自業自得だとやや思う(22.4%) 依存症になるのは自業自得だと思う(5.2%) わからない(0.0%) 無回答(0.0%) 専門家の講義や講演会(n=121) 依存症になるのは自業自得だと思わない(23.1%) 依存症になるのは自業自得だとあまり思わない(14.0%) どちらともいえない(31.4%) 依存症になるのは自業自得だとやや思う(19.8%) 依存症になるのは自業自得だと思う(9.1%) わからない(2.5%) 無回答(0.0%) 依存症について特集したテレビ番組(n=720) 依存症になるのは自業自得だと思わない(10.8%) 依存症になるのは自業自得だとあまり思わない(13.1%) どちらともいえない(36.4%) 依存症になるのは自業自得だとやや思う(26.4%) 依存症になるのは自業自得だと思う(11.0%) わからない(1.7%) 無回答(0.7%) 本・新聞・インターネットなどの記事(n=845) 依存症になるのは自業自得だと思わない(9.3%) 依存症になるのは自業自得だとあまり思わない(13.5%) どちらともいえない(35.3%) 依存症になるのは自業自得だとやや思う(27.2%) 依存症になるのは自業自得だと思う(12.5%) わからない(1.4%) 無回答(0.7%) 広報よこはまやリーフレット等の横浜市が発行する広報物(n=211) 依存症になるのは自業自得だと思わない(11.8%) 依存症になるのは自業自得だとあまり思わない(10.9%) どちらともいえない(35.1%) 依存症になるのは自業自得だとやや思う(27.5%) 依存症になるのは自業自得だと思う(11.4%) わからない(2.4%) 無回答(0.9%) その他(n=59) 依存症になるのは自業自得だと思わない(16.9%) 依存症になるのは自業自得だとあまり思わない(8.5%) どちらともいえない(23.7%) 依存症になるのは自業自得だとやや思う(35.6%) 依存症になるのは自業自得だと思う(13.6%) わからない(1.7%) 無回答(0.0%) 無回答(n=117) 依存症になるのは自業自得だと思わない(6.8%) 依存症になるのは自業自得だとあまり思わない(13.7%) どちらともいえない(36.8%) 依存症になるのは自業自得だとやや思う(25.6%) 依存症になるのは自業自得だと思う(11.1%) わからない(3.4%) 無回答(2.6%) (表ここまで) 出典:ヨコハマeアンケート「依存症に対するイメージや知識に関するアンケート」(令和2年度) 図表2-56:依存症に悩んだとき、相談しようと思う機関 (表ここから) 機関 割合 医療機関(精神科・心療内科) 60.0% 医療機関(かかりつけの医師・内科) 52.5% こころの健康相談センター(精神保健福祉センター) 40.7% 区役所 14.8% 依存症の支援を行っている民間の施設 14.3% 自助グループ 10.5% 地域ケアプラザ 7.0% 精神障害者生活支援センター 6.2% 警察署 5.3% 基幹相談支援センター 2.1% 民生委員 2.1% 弁護士・司法書士 1.1% 学校 0.3% わからない 6.3% (表ここまで) 出典:ヨコハマeアンケート「依存症に対するイメージや知識に関するアンケート」(令和2年度) (コラムここから) コラム・依存症に関する普及啓発について  これまで依存症の普及啓発においては、様々な媒体や表現が用いられてきました。中でも、特に多くの人々の目に触れたものとして、薬物問題に関して過去に一般社団法人日本民間放送連盟が放映していた「覚せい剤やめますか?それとも人間やめますか?」という標語を用いたテレビコマーシャルがありました。こうした強い表現を用いた普及啓発活動は、依存症の本人の人格を否定するものであり、社会全体における依存症者に対する「スティグマ」や依存症の本人による「セルフスティグマ」を強化し、結果的に依存症の本人が回復につながることを難しくしてしまう可能性があります。  また、公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターによる「ダメ。ゼッタイ。」といった標語を用いた各種の普及啓発活動については、一般市民を対象にわかりやすく薬物の危険性を伝え、予防の促進を図る上では非常に大きな効果があるものと考えられます。一方で、回復支援の観点からは情報の不足により誤解を招く恐れがあります。  こうした点を踏まえ、依存症の回復支援に向けた普及啓発では、依存症に関する正しい理解を促進し、また、回復につなげていくようなメッセージを発信していくことが重要になると考えられます。 (コラムここまで) イ:二次支援における課題 C依存症の本人や家族等が早期に適切な支援につながるための普及啓発 (囲みここから) 【課題の具体的内容】 ●相談に至るための相談支援機関や支援策等の情報提供・周知 ●家族等が相談をする場の必要性 ●職場での普及啓発 ●回復イメージが具体的に認識できる情報提供、回復プロセスの周知・啓発 ●情報の受け手が必要な情報を得やすい情報提供の検討 (囲みここまで) 【相談に至るための相談支援機関や支援策等の情報提供・周知】  回復支援施設利用者調査では、回復支援施設の存在自体を知らなかったといった意見や、専門的な医療機関等について、より広く伝わってほしいといった意見が散見されます。  また、eアンケートによれば、身近な人に依存症の問題が起きたときに、「相談しようと思わない」、「相談できない」と回答した人のうち、「相談先を知らないから」と回答した人が27.0%となりました。  身近な支援者や専門的な医療機関、専門的な支援者等への相談が、回復に向けた第一歩であると考えられ、依存症の本人や家族等に対し、相談窓口や支援に関する情報提供・周知を進めていくことが必要と考えられます。 図表2-57:依存症や回復支援施設に関する周知の必要性(例) (表ここから) ●回復支援施設の存在自体を知らなかった。最後に困ってどこかにつながろうと思ったとき、施設の情報を知っていることは大事だと思う。 ●自分はインターネットで調べて近くに専門的な医療機関があることを知ったが、もう少し医療機関等の情報が広く伝わるような形になればよいと思う。 ●ギャンブル等で苦しんでいるとき、回復支援施設があるということがもっと広く知ってもらえればよいと感じていた。回復を支援する場所があるということを知っているだけでも、本人にとっては大きな違いだと思う。 (表ここまで) 出典:横浜市「回復支援施設利用者調査」(令和2年度) 図表2-58:自身や身近な人に依存症が疑われる場合、あるいは依存症の問題が起こった場合に誰かに「相談しようと思わない」、「相談できない」とする理由 (表ここから) 理由 割合 相談を必要と感じないから・(家族や周囲の人の場合)本人が問題と思っていないから 40.4% 相談先を知らないから 27.0% 周囲の人に知られたくないから 22.2% どのような対応をしてもらえるか不安・回復するというイメージが持てないから 19.6% (家族や周囲の人の場合)本人が拒否するから 14.8% 依存症だと認めたくないから 13.9% 相談に行く時間がない・時間が間に合わないから 4.3% 相談すると逮捕されてしまうと思い心配だから 2.2% その他 10.0% (表ここまで) 出典:ヨコハマeアンケート「依存症に対するイメージや知識に関するアンケート」(令和2年度) 【家族等が相談をする場の必要性】  依存症は、本人にその自覚がないものの家族等がその可能性に気付く事例も見られます。また、借金により家族等が大きな影響を受けることや、時にはDVや虐待の被害者になる事例も少なくありません。  さらに、保護者等が依存症であることで、子どもが、いわゆる「ヤングケアラー」として、家事や家族等の世話を行うことにより、年齢や成長に見合わない責任や負担を負い、成長や教育に影響を及ぼすこともあります。  このように依存症は、本人だけでなく家族等にも深刻な影響を及ぼす問題です。しかしながら、検討部会での議論では、本人に依存症の自覚がない状況で、家族等が医療機関などに相談した場合、相談先によっては「本人の自覚や治療に対するモチベーションがないと対処が難しい」との理由で対応を断られることもあるとの指摘が聞かれました。  依存症による家族等への影響を踏まえ、本人のみならず、家族等が相談やSOSを発信できる場の周知や整備、家族等のサポートを行うための支援についても検討を進めていくことが求められます。 図表2-59:検討部会における家族等が相談をする際の課題(抜粋) (表ここから) ●病院に電話をしても「ご本人に治療する気がないなら対応できない」といった反応をされてしまい、家族が遠慮してしまう傾向がある。本人が依存症であることを否認している事例が多いため、病院につながる初めの部分について周知・啓発する取組もあるとよい。 (表ここまで) 【職場での普及啓発】  企業等で働いている人々の中にも、依存症の本人や依存症になるリスクが高い人が、一定数存在しているものと考えられます。  企業等で働いている人々は職場で過ごす時間が長く、周囲の上司や同僚等が、日々の業務での発言や行動から、依存症の問題に気付く事例もあると推察されます。  そこで、本人や家族等に加え、職場における依存症問題に関する普及啓発についても検討を進めていく必要があります。 【回復イメージが具体的に認識できる情報提供、回復プロセスの周知・啓発】  専門的な医療機関や回復支援施設、自助グループ等の活動内容に関する理解が進んでいないこともあり、依存症の本人や家族等にとって、こうした団体・機関に支援を求めた後、どのように回復していくのか、そのプロセスについてのイメージが湧きづらいものと考えられます。  その結果、支援に向けた第一歩を踏み出すことに躊躇してしまったり、せっかく支援団体等につながったにもかかわらず、自身が想定していた回復のイメージとの違いから、医療機関や民間支援団体等の利用を中断してしまったりといった問題が生じることが懸念されます。  こうした問題に対し、実際の回復事例や民間支援団体等を利用する当事者の経験談などの情報提供等を進め、依存症からの回復プロセスを具体的に認識できるような啓発活動を行うことが求められます。依存症は回復可能であること、また、どのような回復プロセスをたどるのか、といったことを当事者や家族等が理解できれば、相談や医療機関・民間支援団体等の継続利用に向けた心理的なハードルが下がるものと期待されます。 【情報の受け手が必要な情報を得やすい情報提供の検討】  国、県、本市など、それぞれの主体において、依存症に関する様々な情報提供が行われています。また、情報提供の媒体・手法も、ホームページへの掲載、公共施設等での啓発資料の配布、公共交通機関における啓発広告の放映、行政職員や医療関係者、民間支援団体等のスタッフによる講演会・セミナーなど多岐にわたります。  こうした既存の情報提供については、本人や家族等が必要な支援につながるために一定の役割を果たしているものと考えられます。しかし、多くは一方向的な情報提供であり、情報の受け手が能動的に取捨選択しないと、必要な情報を入手できないとの指摘が検討部会でなされました。  多くの人に届きやすく、また、情報の受け手が必要な情報を得やすいインターネットを活用した情報提供についても検討していくことが求められます。 図表2-60:検討部会における現在の情報提供方法に関する指摘(抜粋) (表ここから) ●一方向的に情報を提供するWebサイトはあるが、SNS等を活用して気軽に市民が相談できる、双方向的なオンライン相談窓口がまだ普及していないのではないか。 (表ここまで) D依存症の複合的な背景を踏まえた重層的な早期支援体制の構築 (囲みここから) 【課題の具体的内容】 ●行政、専門的な医療機関、身近な支援者、民間支援団体等による、長期にわたる継続的な支援体制の構築 ●生活困窮や虐待等の依存症関連問題への対応 ●未成年あるいは高齢、身体や認知機能の障害等のため民間支援団体等での支援が困難な事例への対応 ●依存症自体の支援より他の生活に関する支援を必要とする人への対応 (囲みここまで) 【行政、専門的な医療機関、身近な支援者、民間支援団体等による、長期にわたる継続的な支援体制の構築】 【生活困窮や虐待等の依存症関連問題への対応】  こども家庭支援課アンケートによれば、回答した13区のうち約8割の区が、保護者がギャンブル等の問題を抱えている事例に対応した経験があり、また、約9割の区が薬物の問題を抱えている事例に対応した経験がありました。  また、「厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト」によれば、アルコール依存症はうつ病と合併する頻度が高く、併せて、アルコールと自殺との間にも関連性があるとの研究結果が示されています。  このように依存症の本人は、依存症に至る背景に様々な問題を抱えている事例や、依存症に起因して社会生活や家庭生活に様々な問題が生じている事例が散見されます。連携会議においても、依存症の本人は多重債務、DV、自殺などの差し迫った危機に直面している場合も多く、そうした危機回避をしっかりと行わなければ、その後の回復プロセスがうまく進まないという問題点が指摘されています。  そのため、生活困窮や虐待など他の生活課題による相談事例でも、背景に依存症の問題を抱えている可能性があることに気付く必要性や、反対に依存症の回復支援に対応する際も、背景にある課題についても包括的にサポートしていく必要があります。  こうした支援ニーズに対応していくため、行政や専門的な医療機関、民間支援団体等のみならず、身近な支援者など、多様な機関・団体が連携し、長期的・包括的なサポートを行う体制を構築していくことが求められます。 図表2-61:市内18区のこども家庭支援課が対応した事例のうち、 子どもあるいは家族等にギャンブル等あるいは薬物の問題が見られた事例(直近2年間)(複数回答・n=13) (表ここから) 回答項目 回答数 回答割合 ギャンブルの事例があった 11 84.6% 薬物の事例があった 12 92.3% (いずれの事例も)なかった 1 7.7% (表ここまで) 出典:市内18区のこども家庭支援課虐待対応チームを対象とするアンケートより 図表2-62:連携会議における回復初期段階の「危機回避」の重要性 (表ここから) ●早期発見・早期回復というが、依存症の本人は自殺やDV、多重債務問題など差し迫った危機に直面している。こうした危機・危険を回避しなければ、二次支援・三次支援における回復支援がうまく進まない。 (表ここまで) 【未成年あるいは高齢、身体や認知機能の障害等のため民間支援団体等での支援が困難な事例への対応】  依存症の本人が抱えている問題や置かれている状況には様々なものがありますが、本人が未成年のために教育機関や児童福祉施設と連携した支援が必要な事例や、高齢、身体や認知機能の障害等のために介護を必要とする事例も見られます。  しかし、このような課題を抱える依存症の本人への支援は、児童福祉や介護などの専門知識が必要となり、連携体制が構築されていない場合には対応が困難になることもあります。  こうした点を踏まえ、未成年あるいは高齢、身体や認知機能の障害等により民間支援団体等の支援が困難となっている事例に対応するための取組が求められます。また、介護事業者において、比較的軽度の依存症の本人への支援が可能となる情報提供や研修の機会が求められます。 図表2-63:回復支援施設ヒアリングにおける支援困難事例に関する意見(例) (表ここから) ●スリーミーティングが基本だが、困難な利用者がいる。生活の基本的支援(金銭・服薬管理、受診・買い物同行)のほか、緊急対応、通院同行などの支援も必要になっている。 ●更生施設入所者は障害福祉サービスが使えないため、利用先が限定されてしまう。 ●高齢化や介護的支援のニーズを伴う利用者も増えてきた中で、社会資源利用の制限や看取りのニーズといった課題も抱えている。 (表ここまで) 出典:市内回復支援施設ヒアリングより 【依存症自体の支援より他の生活に関する支援を必要とする人への対応】  依存症の本人の中には、専門的な医療機関や民間支援団体等における依存症の回復支援に加え、日常生活上の支援が必要な人や金銭管理等に焦点を当てた部分的な支援を行うことで問題が解決に向かう人など、他の生活に関する支援が必要な事例もあると推察されます。  このような事例における、適切な支援機関・団体の見極めや支援機関・団体へのつなぎ、回復プロセスにおける連携のあり方などについて、検討を進めていく必要があると考えられます。 図表2-64:施設のよさ、回復に有益だったこと、回復の支え(例) (表ここから) ●生活面・経済面での支援を受けることで回復に集中できた ●生活保護が受給できなければ、回復できなかったかもしれない。生活保護を受給できたことで、1年半くらい仕事をせず、回復に専念する時間を確保できた。 ●生活支援や金銭管理をしてもらったことで助かった ●回復のペースが崩れてしまったとき、施設でお金を管理してもらっておけば、使い込む心配がなく、またやり直すことができる。 ●日常生活のサポートをしてもらえたことがよかった。買い物、金銭管理、洗濯、掃除など、生活上のことを相談できる人がいてくれて助かった。 (表ここまで) 出典:横浜市「回復支援施設利用者調査」(令和2年度) E身近な支援者等から専門的な支援者へ円滑につなぐ取組 (囲みここから) 【課題の具体的内容】 ●身近な支援者における依存症の疑いのある人の発見とつなぎへの対応 ●身近な支援者への支援情報・知識の提供 (囲みここまで) 【身近な支援者における依存症の疑いのある人の発見とつなぎへの対応】 【身近な支援者への支援情報・知識の提供】  市が地域ケアプラザや精神障害者生活支援センター、基幹相談支援センターを対象に実施したアンケートによれば、アルコールの問題は、一次相談支援機関に寄せられる相談の内容として珍しくない状況にあります。他方、身近な支援者から専門的な支援者へのつなぎがうまくいかず、必要な支援に結びつかない事例もあります。  また、検討部会でも、委員から、一次相談支援機関において依存症が疑われる人から相談を受けた場合の標準的な対応方法やフローの明確化の必要性について指摘がなされました。  こうした現状や指摘を踏まえ、一次相談支援機関やその他の身近な支援者が依存症の疑いのある人から相談を受けた場合に、適切な支援者につなぐことができるよう、相談窓口への情報・知識の提供やガイドラインの整備について検討を進めていくことが求められます。  さらに、本市が実施した各種のヒアリングや検討部会での議論によれば、身近な支援者、一般医療機関や救急医療機関、司法関係者などにおいて、依存症にかかる専門的な支援者の活動内容、依存症の本人を対象とした支援策などが、十分に認知されていない現状があります。  加えて、依存症に関する基本的な知識や情報などについても浸透しておらず、研修等を求める声も聞かれます。  身近な支援者と専門的な支援者との連携促進に向けて、支援情報や知識向上のための身近な支援者を対象とする研修や情報交換などの取組を進めていく必要があります。 図表2-65:検討部会における身近な支援者からのつなぎに関する指摘(抜粋) (表ここから) ●司法書士としてギャンブル等により借金を抱えた人の債務整理の相談にも対応するが、例えばギャンブル等に関する相談者の中にも、依存症の人もいれば、そうでない人もいて、その判断をするのは難しい。依存症かどうか、ある程度把握することができれば、他の専門的な相談窓口につなげることができるため、研修で依存症について知ることが大事だと思う。 ●相談者が「依存症ではないか」と思った時、行政への紹介や啓発リーフレットを手渡すというだけでよいのかという問題がある。リーフレットを手渡すのに加えて、紹介後にどのような経過をたどるのかを知っておくことができれば、ある程度の動機づけをしやすいのではないかと思う。そのためには、我々も依存症について学ぶことが重要である。 ●弁護士として薬物の使用で逮捕された人と接する機会があるが、そうした人は刑事事件の公判を控えているため、治療へのモチベーションが非常に高い。そういう人を支援施設につなげたいと考えた時に、実際には特定の回復施設や特定のクリニックにつなげるとか、そのくらいの知識しか持ち合わせていない現状がある。支援を必要とする人に出会ったにもかかわらず、十分に支援につなげられないというジレンマを抱えている。 ●身近な支援者に対する研修も重要だが、対応ガイドラインを作成していくということが対策としては早いのではないか。 (表ここまで) F専門的な支援者や家族等への支援 (表ここから) 【課題の具体的内容】 ●民間支援団体等や医療機関等が継続的な支援を行う上での課題への対応 ●家族等に対する支援 (表ここまで) 【民間支援団体等や医療機関等が継続的な支援を行う上での課題への対応】  民間支援団体等や専門的な医療機関等による支援の提供にあたって、回復支援につながっても、本人の判断により回復に向けた治療やプログラムを中断してしまう事例が見られます。  回復支援施設利用者調査では、こうした問題の背景には、本人の意向と支援団体・機関における支援方針・内容のミスマッチなどが、理由として挙げられています。一方で、専門的な医療機関等で診断を受けたり、依存症の説明を受けたりすることで、その後の民間支援団体等の利用につながった事例も聞かれます。  そのため、本人への動機づけや本人の意向と支援内容のマッチングのあり方、中断後のフォローのあり方などについて検討・情報共有を行う場を設けるなど、専門的な支援者が、継続的な支援を行うために必要な施策を講じることが求められます。 図表2-66:回復支援施設等の継続利用に至らなかった理由(例) (表ここから) ●周囲とうまくいかなかった、なじめなかった ●専門的な医療機関へ入院した際に自助グループを紹介されたが、周囲は年配の男性ばかりで、自分とは何か違うという感じがあった。 ●価値観が違った、共感できなかった ●国籍や性別の違いなどから、施設の仲間とは価値観等が異なると感じていた。 ●施設に不満があった ●朝昼晩と12ステップのミーティングばかりで、運動が月1回くらいしかできないこともストレスだった。 ●施設のプログラムが段階制になっていて、周りの賛意が得られないと次の段階に進めないため、周りを気にしながら生活しており、自由な時間がなかった。 (表ここまで) 出典:横浜市「回復支援施設利用者調査」(令和2年度) 【家族等に対する支援】  二次支援から三次支援にかけて、家族等が本人の最も身近な立場で回復プロセスを見守ることもあります。  家族等が安定した状態で回復プロセスを見守ることが、本人の回復において重要です。しかし、順調に回復が進む事例だけではないため、家族等は常に本人の中途退院・退所や再乱用、自殺等への不安や悩みを抱えながら見守っている事例も少なくありません。  検討部会においては、家族等と本人との関係の取り方に関する情報提供や家族等の不安・負担を軽減するための支援が不足しているとの指摘がありました。回復プロセスに重要な役割を担う家族等への支援の充実に向けた取組を進めていくことが必要と考えられます。 図表2-67:検討部会における家族等への支援に関する指摘(抜粋) (表ここから) ●薬物依存症者と家族は一体である。家族等が健康になると本人の回復に結びつく事例が経験上多い。計画の中では、もう少し、家族の支援を考えてもらえるとよい。 ●三次支援の段階においても、本人の回復が始まったとしても、行ったり来たりしている状態のため、家族等の支援を継続して行うネットワークや、施設と医療機関の横のつながりの強化が必要である。 (表ここまで) ウ:三次支援における課題 G支援団体ごとの特色を生かし、多様なニーズに対応するための情報共有 H支援者によるアセスメント力向上 (囲みここから) 【課題の具体的内容】 ●対象者像や支援内容等の施設ごとの特色を生かした、ニーズに合う支援提供 ●支援者によるアセスメント(その人に合った支援を見極めること) ●女性への回復支援の課題解決 (囲みここまで) 【対象者像や支援内容等の施設ごとの特色を生かした、ニーズに合う支援提供】 【支援者によるアセスメント(その人に合った支援を見極めること)】  依存症の問題を抱える背景には、性別や成育歴、家族関係、障害の有無など、様々な状況があり、こうした個々の状況や依存対象を踏まえて支援を提供することが重要になります。  また、依存症社会資源調査や回復支援施設ヒアリングでは、市内で活動している民間支援団体等はその支援方針や支援内容などが多彩であり、他の自治体と比較して本人にとって多くの回復の選択肢が存在していることが示されています。  回復支援施設利用者調査では、仮に自身のニーズ等に合わない医療機関や回復支援施設を利用すると、回復プロセスの途上で中途退院・退所してしまう可能性があるとの意見がありました。回復プロセスを円滑に進めていくためには、アセスメントを通じて当事者のニーズや状況を評価し、本人に合った支援の内容を見極め、同時に支援団体の特色を踏まえて両者のマッチングを行うことが重要になります。  そのため、依存症の本人が自身のニーズに合った専門的な支援者につながる機会の充実を進めていくことが求められます。また、つながった支援者が合わなかった際には、改めて本人に合った適切な支援者につながるために、支援者間の連携体制が求められます。 【女性への回復支援の課題解決】  回復支援施設ヒアリングによれば、男性と比較して女性は摂食障害との重複や統合失調症などの他の精神疾患を抱える利用者も多く、加えて、DV・性被害など、女性が被害者となることの多い課題と依存症の問題が重なっており、支援が難しい事例が少なくありません。  これまでの研究(脚注21)によれば、女性の依存症は、多問題性(身体的・心理社会的な問題を多く抱え、複合的な支援ニーズに応える必要性)や問題領域の広範さ(生活福祉や女性相談、児童福祉、医療、更生保護、教育などの広範な関係機関との連携が必要)など、様々な特性が見られる点が指摘されています。  さらに、家事や出産・子育て等が回復支援施設や自助グループの利用しづらさや中断の要因にもなるといった問題から、症状が悪化してから支援につながることが比較的多いものと推察されます。  「本人に合った支援を提供する」という観点からすれば、こうした女性の依存症の特性を踏まえた回復支援が求められますが、女性の特性に配慮したサポートの必要性は広く認識されていません。  また、DV・性被害等を男性の前で語りにくいことから支援スタッフを女性に限定する必要がある場合がありますが、女性専用の回復支援施設においては、女性人材の確保に苦労しており、支援内容を抑制せざるを得ない場合もあります。  このような女性の依存症の回復支援が直面する課題の解決に向けた、方策を検討していくことが必要です。 脚注21:特定非営利活動法人ダルク女性ハウス『依存症者に対する地域支援、家族支援のあり方についての調査とサービス類型の提示』(厚生労働省 平成22年度障害者総合福祉推進事業) I専門的な支援者等が継続的に活動するための支援 J様々な支援ニーズに取り組む民間支援団体等の運営面等の課題への対応 (囲みここから) 【課題の具体的内容】 ●民間支援団体等における、制度と支援ニーズの不一致解消に向けた検討 ●他の生活に関する支援への負担の対応検討 ●施設の安全管理・危機管理 ●新型コロナの感染拡大防止に向けた「新しい生活様式」を踏まえた活動の検討 ●専門的な支援者間、身近な支援者間で情報共有などを行う場の必要性、横のつながりがある環境 ●継続した勤務に向けた、民間支援団体等スタッフの人材育成、ケア (囲みここまで) 【民間支援団体等における、制度と支援ニーズの不一致解消に向けた検討】 【他の生活に関する支援への負担の対応検討】  依存症の支援は、生活全般の支援や通院等への同行など、様々なサポートが必要になります。特定の曜日や時間帯だけでなく、24時間365日の支援が必要となる場合もあります。  また、依存症の中には、依存症の回復支援そのものよりも、生活課題に対する支援が必要な場合や金銭管理等の支援を行うことで問題が解消に向かう場合もあり、回復に向けて幅広い支援が求められる現状があります。  現在、多くの民間支援団体等では、障害者総合支援法などの制度に基づくサービスによる支援を行っていますが、こうしたサービスは提供量に上限が設けられていたり、利用可能な対象者が限定されていたりすることが一般的です。そのため、回復支援施設ヒアリングでは、理念に即した支援を全ての当事者に十分に提供することが難しいとの意見が見られます。  加えて、利用者の高齢化などのために介護や看取りのニーズなども増加しているとの意見も見られ、支援のベースとなっている制度と支援ニーズの不一致が生じつつあります。  こうした問題に対応していくため、制度と支援ニーズのギャップを埋めるような活動支援のあり方、団体の負担軽減に向けた方策について検討を進めていくことが求められます。 【施設の安全管理・危機管理】  回復支援施設ヒアリングによれば、DVやストーカー被害を受けている人が利用する場合などもあり、施設の安全管理や危機管理に対する不安が聞かれました。  さらに、近年、風水害や地震等により、福祉施設が被災する事例も多く、特に入所施設において災害発生時の避難などをいかに行うかといった問題も顕在化してきています。  各施設が安全管理や危機管理の対策を講じる上で必要な支援が求められます。 【新型コロナの感染拡大防止に向けた「新しい生活様式」を踏まえた活動の検討】  新型コロナにおいては、感染拡大の防止に向けて、いわゆる「3密」(脚注22)の状態を回避することが重視されています。そのため、これまで対面により開催されてきた面談や自助グループによるミーティングなどが延期・中止となったり、人数・会場が制限されたりする場合も出てきています。  自助グループ等が行うミーティングは、本人の回復や家族等の分かち合いと精神的な負担の軽減において重要な役割を果たしており、こうした場が開催されないことによる影響が懸念されています。  一部では、テレビ・Web会議システムを活用したオンラインミーティングが開催されており、これまで時間の都合等で参加できなかった依存症の本人や家族等が自助グループに参加できるようになったといったプラスの側面も出てきています。対面のミーティングの持つ意義や重要性は引き続き重視しつつ、それと同時に「新しい生活様式」の下での民間支援団体等の活動のあり方、相談対応のあり方を模索していくことが求められます。 脚注22:新型コロナの集団発生のリスクが高いとされる、「換気の悪い密閉空間」、「多数が集まる密集場所」、「間近で会話や発声をする密接場面」といった3つの条件を言い表すため、厚生労働省等が掲げている標語のこと。 図表2-68:検討部会における新型コロナ感染拡大による支援活動への影響に関する指摘 (表ここから) * 新型コロナの影響は、しばらく続いていくのではないか。そういった社会環境で、何が我々(支援者)にできるかというのを考えていく必要がある。色々な施設がつながるということに関して、「とりあえず不十分ながらもやってみる、まず取組から始めてみる」ということも必要ではないか。 * 新型コロナの感染拡大に伴う緊急事態宣言下では、断酒会の夜間の例会ができなくなった。 * 市内では、自助グループのミーティングが様々な場所で毎日のように開かれており、例会に出席することで断酒を継続させる例が多い。しかしながら、今は開催することができない。オンラインでも話はできるが、仲間が集まる会場には、特別に醸し出される雰囲気みたいなものがあり、「1人ではない。1人ではやめられないけれども、皆の力でやめ続けよう」という姿勢が生まれる。 (表ここまで) 図表2-69:連携会議におけるオンラインミーティング等の利点に関する意見 (表ここから) * オンラインを活用することで、通勤時間等に縛られずミーティングをすることができた。 * いても立ってもいられない、つながらないではいられないという人たちが、赤ちゃんを抱えながら、あるいは本当は行きたいのに出られないという人たちも含めて、5分でも10分でもオンラインでつながることができたという前進した面もあった。 (表ここまで) 【専門的な支援者間、身近な支援者間で情報共有などを行う場の必要性、横のつながりがある環境】  回復支援施設ヒアリングでは、グループワークによる他の施設のスタッフの話を聞ける実践的な研修を希望する意見や、事例検討などを施設横断的に行う場を求める意見などが聞かれました。  また、区役所の生活支援課や障害福祉サービス事業所などの身近な支援者との関係づくりを求める意見も聞かれます。  身近な支援者においても、各種実態調査から依存症の本人への対応に苦慮している様子が見受けられ、また、民間支援団体等の活動内容への理解についてもさらに深めていく余地があるものと考えられます。  こうした支援者のニーズを踏まえ、本市では連携会議を開催し、地域の依存症対策に関する情報や課題の共有を進めています。今後、専門的な支援者間、身近な支援者間、専門的な支援者と身近な支援者間での情報共有などを行う場を創出し、支援者全体のさらなるネットワーク化を進めていくことが求められます。 図表2-70:回復支援施設における支援者間の横のつながりに関する意見(例) (表ここから) * グループワークなどで他の施設のスタッフの話を聞けるような、実践的な研修があるとよい。 * 精神医学に関する一般知識の習得や事例報告等の場があれば参加したい。 * 新任スタッフが、他の回復支援施設のスタッフの取組について話を聞くような研修は有用だと思う。 * 区役所の生活支援課と個別支援で連携を図りたい。お互いに情報共有をすることで、よりよい支援ができるのではないか。 * 援助者のためのセミナー(経験して勉強する必要性、グループセラピーの進め方)などが大切と感じる。 * 弁護士や司法書士の中にはギャンブル等の問題に理解のない人も多いため、啓発を希望する。 (表ここまで) 出典:市内回復支援施設ヒアリングより 【継続した勤務に向けた、民間支援団体等スタッフの人材育成、ケア】  民間支援団体等のスタッフは、回復に向けた本人の気持ちに共感できることや支援内容の専門性・特殊性から、依存症からの回復者などがそのまま施設で支援者として働く事例が多く見られ、他の福祉施設のように一般に募集しての採用が難しい状況にあります。そのため、支援人材の定期的な確保や計画的な育成が難しく、人材が不足しやすい状況にあります。  また、回復支援施設ヒアリングによれば、女性の回復支援を専門とする施設において、スタッフが女性に限られるため、出産や育児休暇などにより継続的に関わることが難しく、より人材確保面での課題が顕在化しているものと考えられます。  さらに、依存症の本人は様々な課題を抱えていることがあり、生活面のサポートや様々な関係機関との調整など、業務量が増大する中で、スタッフは「燃え尽き症候群」(バーンアウト)のリスクに晒されている可能性が高いと推察されます。  こうした問題を踏まえ、継続的な人材確保のために、スタッフを対象とした研修や支援者のネットワークによる情報交換の促進、バーンアウトの防止に向けた取組などを進めていくことは、団体の活動の継続に向けて極めて重要と考えられます。 図表2-71:回復支援施設ヒアリングにおける職員の確保等に関する意見(例) (表ここから) * 特定の疾患のある利用者が顕在化し、ミーティングの参加が難しい。職員はバーンアウトになりやすい。 * 女性のみという時点で、スタッフ候補の人数がそもそも少ない。スタッフの不足により、実施したい支援ができないこともある。 * 回復者自体がそもそも少ないが、女性の回復者は出産や育休などがあり、施設の運営等に継続的に関わることが難しい。 (表ここまで) 出典:市内回復支援施設ヒアリングより K回復段階において新たに顕在化する課題への対応 (囲みここから) 【課題の具体的内容】 ●就労への移行についての課題解決に向けた検討 ●医療機関との連携 ●地域で生活していくための支援 ●矯正施設等から地域移行をした後の孤立を防ぐための継続した支援 ●依存症以外に重複した問題や障害のある人に対する支援課題への対応 ●依存症のスティグマによる民間支援団体等の運営課題への対応 ●回復期における家族等の負担の大きさと家族等への継続的な支援 (囲みここまで) 【就労への移行についての課題解決に向けた検討】  本人に障害がある場合、障害福祉サービスの枠組みにおいては、就労移行支援や就労継続支援など、就労への移行をサポートする様々なサービスが提供されています。しかし、依存症に対応したサービスを提供する事業所は必ずしも十分に確保されていません。  また、本人の依存症やその他の精神疾患等の状況を理解し、適切な合理的配慮を提供することのできる職場環境の実現も求められます。  依存症からの回復過程にある人が、自分らしく働くことができる職場を見つけ、働き続けることができるようにするため、関係主体と検討を進めていくことが重要と考えられます。 【医療機関との連携】  依存症の本人の回復を継続的に支援していく上では、医療機関と民間支援団体等が緊密に連携し、本人に適した支援を行っていく必要があります。  しかしながら、依存症治療に対応できる精神科の病院や診療所は必ずしも十分な数が確保されておらず、福祉分野の支援者との連携も十分でない場合があります。また、検討部会の議論では、複数の依存症や重複障害のある事例において、医療機関同士の連携が十分に取れていない場合があるとの指摘もなされています。  こうした状況を踏まえると、医療・福祉の両面から専門職が依存症の本人の状態像を共有し、適切な回復支援を行うための医療機関間及び医療機関と民間支援団体等との連携体制が必要だと考えられます。 図表2-72:検討部会における医療機関との連携に関する指摘 (表ここから) * 「発達障害ではこの医療機関、薬物依存ならこちら」など、重複障害に対するたらい回し的な現状をどうしたらよいかという問題がある。 * 医療機関同士の連携ネットワークがあり、「この患者さんは我々が診るけれども、何かあったらアドバイスをください」といった関係性ができれば、様々な疾患を持っている人にも対応ができていくのではないか。 (表ここまで) 図表2-73:行政・横浜市への要望(医療・福祉・行政の連携の必要性) (表ここから) * クロスアディクション(2つ以上の依存が合併していること)の人への支援では、医療の力を借りることは多い。 * もともと統合失調症があり、そこにアルコール依存症が併発しているパターンの場合、医療機関のケースワーカーと連携を取りながら支援をしている。また、双極性障害の人だと、状態をこまめに伝えることくらいしかできない。このあたりの連携がもっとうまくできればと思う。 * いろいろな精神障害が重複している人が多いため、医療機関と連携しないと安心して支援ができない。 * 重複障害と依存症のどちらの治療を優先すべきかの判断は難しく、医療機関と適切に連携をしていく必要がある。 * トラウマを抱えていたり、発達障害との重複障害の人達が、依存症の治療と並行してカウンセリングなどの治療に通える環境が整えばよいと思う。 (表ここまで) 出典:横浜市「回復支援施設利用者調査」(令和2年度) 【地域で生活していくための支援】 【矯正施設等から地域移行をした後の孤立を防ぐための継続した支援】  依存症からの回復過程において、民間支援団体等の入所施設から地域での生活に移行していく際には、住まい等の生活基盤を確保した上で、当事者が自立した生活を送るための支援を提供する必要があります。  しかしながら、検討部会での議論では、依存症に対する偏見等から、住まいを確保する上で大きなハードルがあるとの実態が指摘されています。また、それまで支援者や他の当事者と共同生活を送っていた人が地域に移行すると、周囲からのサポートが大きく減少し、施設の仲間との関係が薄れ、孤立してしまう可能性も懸念されます。  また、「横浜市再犯防止推進計画」によると、平成30年において、神奈川県に所在する刑務所から出所した人の約3割が、出所時に帰住先がない状況となっており、矯正施設から出所した人が孤立した状況に置かれやすいことがうかがえます。  検討部会においては、特に再犯率の高い薬物依存症の人に対して、矯正施設出所後の継続的なサポートが必要であるとの意見が聞かれました。  地域での生活に移行することで、支援から切り離され、回復が阻害されることのないように、継続的に本人へのサポートを行い、孤立や再犯を防ぐ体制を構築していくことが求められます。 図表2-74:検討部会における地域生活を送る上での課題等に関する指摘 (表ここから) * 依存症で民間支援団体等につながった後、クリーンの状態が続いて回復しても、重複障害があると民間支援団体等でもサポートのしようがない場合がある。そういう場合においては、退寮して社会に出ても、生きづらさを抱えているために一般の精神科に行って薬を処方してもらおうとするが、薬物依存歴のことを言うと「うちでは診られない」と断られてしまう。 * 「住まい」の問題もある。グループホームは、一般の精神障害のみであれば受け入れてくれるが、薬物依存となると途端に受け入れてくれなくなる。「たらい回し」が始まって、本当に限られた所でしか生きていけないという現状がある。せっかく薬物依存からの回復を日々重ねていっても、つないで支援していかないと、本人はつまずいてしまう。社会の中で見守っていかないと、彼らは生きていけないと思う。 (表ここまで) 図表2-75:刑務所出所時に帰住先がない人の割合(神奈川県) (表ここから) 年 割合 平成26年 35.0% 平成27年 32.9% 平成28年 33.9% 平成29年 27.0% 平成30年 29.4% (表ここまで) 出典:横浜市「横浜市再犯防止推進計画」 【依存症以外に重複した問題や障害のある人に対する支援課題への対応】  検討部会の議論では、依存症の本人は、特定の依存対象のみならず、複数の対象への依存や、他の精神疾患、障害等を抱える場合もあり、一つの施設だけでは十分な支援を行うことができない場合があることが指摘されました。  単独の医療機関や回復支援施設では対応が難しいクロスアディクションや重複障害の人の回復支援に向けて、専門的な医療機関や民間支援団体等、身近な支援者が連携し、支援を進めていくための関係団体・機関間の協働の体制を構築していくことが必要と考えられます。 【依存症のスティグマによる民間支援団体等の運営課題への対応】  一次支援で述べたように、地域社会や職場において、依存症に対する正しい知識が十分に普及していないことから、スティグマが存在しており、施設運営における難しさもあります。  依存症の本人が地域で生活するためには、依存症に対する正しい知識の周知を進めて、偏見の解消を図るとともに、民間支援団体等が地域の中で活動しやすい環境を整えていくことが求められます。 【回復期における家族等の負担の大きさと家族等への継続的な支援】  検討部会では、回復期においても再発の可能性があるといった依存症の特性上、寄り添い続ける家族等の負担が極めて大きいとの指摘がなされました。  依存症の回復過程が直線的なものではなく、一進一退を繰り返すものであるという特性を十分に踏まえた上で、本人の長期的な回復過程とともにある家族等の負担を理解し、総合的にサポートする取組が求められます。