第4章 取り組むべき施策 1 本計画における取り組むべき施策の整理  本計画においては、第2章に記載した課題に対応し、第3章で示した計画の基本理念の実現に向けて、一次支援・二次支援・三次支援の領域ごとに全体で6つの重点施策を設定しました。  本章では、各重点施策に位置付けられる具体的な取組の方向性を整理するとともに、施策の詳細な内容や具体的な取組等について記載していきます。 なお、各重点施策と第2章において提示した計画課題との対応関係は、下記の通りです。 図表4-1:一次支援の領域における課題と重点施策の対応 (表ここから) 【課題】 @ライフステージに合わせた切れ目ない依存症に関する情報提供・啓発 A特に依存症のリスクが高まる時期に重点化した普及啓発 B依存症に関する基本知識の普及啓発 ↓ ◆重点施策1 予防に資する普及啓発 ◆重点施策2 依存症に関する正しい理解、知識を広めるための普及啓発 (表ここまで) 図表4-2:二次支援の領域における課題と重点施策の対応 (表ここから) 【課題】 C依存症の本人や家族等が早期に適切な支援につながるための普及啓発 D依存症の複合的な背景を踏まえた重層的な早期支援体制の構築 E身近な支援者等から専門的な支援者へ円滑につなぐ取組 F専門的な支援者や家族等への支援 ↓ ◆重点施策3 相談につながるための普及啓発 ◆重点施策4 身近な支援者等から依存症支援につなげるための取組 (表ここまで) 図表4-3:三次支援の領域における課題と重点施策の対応 (表ここから) 【課題】 G支援団体ごとの特色を生かし、多様なニーズに対応するための情報共有 H支援者によるアセスメント力向上 I専門的な支援者等が継続的に活動するための支援 J様々な支援ニーズに取り組む民間支援団体等の運営面等の課題への対応 K回復段階において新たに顕在化する課題への対応 ↓ ◆重点施策5 専門的な支援者による回復支援の取組 ◆重点施策6 地域で生活しながら、回復を続けることをサポートする取組 (表ここまで) 2 一次支援にかかる重点施策  一次支援については、「ライフステージに合わせた切れ目ない依存症に関する情報提供・啓発」、「特に依存症のリスクが高まる時期に重点化した普及啓発」、「依存症に関する基本知識の普及啓発」という課題に対応するため、2つの重点施策を設定しました。  施策の主な対象は市民全般を想定していますが、特に依存症になるリスクの高い状況にある人やその周辺の人に向けて効果的な啓発活動をすることも必要と考えられます。  また、正しい理解を普及し、依存症に対する誤解や偏見をなくすことを目的とした啓発も実施していきます。 (囲みここから) 重点施策1 予防に資する普及啓発  依存症の予防に向けて、様々な年齢の人を対象として、様々な場所で普及啓発・予防教育を展開していきます。 (囲みここまで) (1)総合的な依存症対策の取組 ア:若年層への啓発・依存症予防の知識の提供 ○依存症の予防及び依存症についての正しい理解を普及するため、児童・生徒を対象としたリーフレットの配布などの教育・啓発を実施するほか、ホームページ等で広く青少年・若者向けの効果的な広報や教育、啓発を実施します。 ○子どもの健全育成に大きな役割を担う教員・保護者・地域の大人や団体・区役所などの相談支援者等を対象とした、依存症予防に関する知識の提供を進めていきます。 ○ゲーム障害に関して、ゲームを開始する年齢に合わせた正しい理解と適切な付き合い方について、小中学校等と連携して普及啓発を実施します。 イ:それぞれの年齢に適した普及啓発・予防教育の実施 ○就職・結婚・出産等のライフイベントや定年退職等による生活の変化は、依存症のきっかけとなることもあるため、リスクが高い時期を踏まえ、様々な身近な支援者と連携を図りながら、それぞれの年齢・世代・性別等に応じた内容・手法による普及啓発・予防教育を進めていきます。 ウ:大学生への啓発 ○横浜市立大学において、健康診断時に啓発チラシを配布するとともに、アルコール摂取についての問診や保健相談を実施します。 ○市内にキャンパスを有する大学等に対して、本市が作成する若年層向けの普及啓発資料の提供や相談窓口の周知を図るなど、個々の大学等における啓発活動を支援していきます。 エ:身近な支援者等による啓発 ○ライフステージの中で何らかの問題に直面した際に、その問題を起因として依存症となることを防止するため、身近な支援者におけるリーフレットの配架・配布などを通じ、依存症に関する啓発や予防に向けた情報提供などを進めていきます。 ○精神疾患や精神障害、発達障害と依存症を併発する事例も見られます。依存症の予防に向け、区役所の精神保健福祉相談や精神障害者生活支援センター、基幹相談支援センター、発達障害者支援センター等における啓発や情報提供の取組を進めていきます。 (2)アルコール依存症に特化した取組 ア:多量飲酒等の防止(適量な飲酒)への取組 ○多量飲酒等による健康状態の悪化や急性アルコール中毒の予防、多量飲酒等を継続することによるアルコール依存症の発症などを予防するため、生活習慣病改善相談や健康づくり関連イベントなどの普及啓発の中で、多量飲酒等の防止に向けた啓発等の取組を実施します。 ○「よこはま企業健康マガジン」(メール配信)による市内企業へのアルコール問題に関する記事の配信などを通じ、市内で働く人たちに多量飲酒等の防止の重要性を啓発していきます。 イ:未成年飲酒防止・不適切な誘引防止の取組 ○学習指導要領に基づく保健学習において、未成年者の飲酒の防止に向けた教育等を進めていきます。 ○周囲の大人が未成年者に対して不適切な飲酒を誘引することのないよう、啓発活動を実施します。 ウ:女性特有の課題に応じた飲酒の防止の取組 ○依存症への進行の早さ、妊娠中の胎児への影響の危険性など、特有の課題が生じる女性のアルコール依存症の予防のため、リーフレット等の配布などを通して、依存症に関する情報提供や普及啓発を実施します。 (3)薬物依存症に特化した取組 ア:教職員等向け研修 ○青少年の薬物の乱用を防止するため、薬物乱用による心身への影響や依存症などについて教職員等を対象として研修を行い、小中・高等学校における啓発教育の質の向上を図ります。 イ:薬物乱用防止への取組 ○あらゆる年代における薬物乱用の防止に向けて、現在実施している不正大麻・けし撲滅運動や講習会、啓発の充実を図るとともに、薬物乱用防止庁内連絡会を通じた関係機関との連携・情報共有を引き続き推進していきます。 (4)ギャンブル等依存症に特化した取組 ア:高等学校の保健体育におけるギャンブル等依存症の教育 ○平成30年に公示された高等学校の学習指導要領において、保健体育の科目内で精神疾患について取り上げることとなりました。また、高等学校学習指導要領解説では、アルコール、薬物等の物質への依存症に加えて、ギャンブル等依存症についても取り上げることとされました。 こうした国の動きを踏まえ、高等学校で行われる保健体育の授業において、ギャンブル等依存症についても取り上げていきます。 イ:場外券売り場などでの普及啓発 ○ギャンブル等依存症に特化した普及啓発を行うため、競馬や競輪、競艇、オートレースなどの公営競技の場外券売り場において、リーフレットの配架・配布など、ギャンブル等依存症に関する普及啓発を実施します。 (囲みここから) 重点施策2 依存症に関する正しい理解、知識を広めるための普及啓発  依存症に対する偏見の解消やその前提となる正しい理解の促進に向けて、市民全体を対象とした普及啓発の取組を進めていきます。 (囲みここまで) (1)総合的な依存症対策の取組 ア:依存症について関心を持ち正しい理解を促進する普及啓発 ○多くの市民が依存症の問題に関心を持ち、依存症に関する正しい理解が進むよう、メディアやインターネットを活用した情報発信など、多くの人の目に触れる手段・方法による情報の提供・発信を行います。 ○依存症理解促進のための市民向け講座を開催していきます。 イ:依存症の正しい知識の普及啓発 ○依存症は誰もが直面しうる問題であり、適切な支援を受けることで回復できるという正しい知識の普及啓発に向けて、セミナー・講演会の開催、リーフレット等の配布を行います。 ○民間支援団体等において、当事者による語りを含むセミナー・講演会などを実施し、こころの健康相談センターや区役所においてその支援を行います。 3 二次支援にかかる重点施策  二次支援については、「依存症の本人や家族等が早期に適切な支援につながるための普及啓発」、「依存症の複合的な背景を踏まえた重層的な早期支援体制の構築」、「身近な支援者等から専門的な支援者へ円滑につなぐ取組」、「専門的な支援者や家族等への支援」といった課題に対応するため、2つの重点施策を設定しました。  施策の主な対象者は、依存症の本人や依存症が疑われる人及びその家族等のほか、身近な支援者や民間支援団体等や医療機関とします。 (囲みここから) 重点施策3 相談につながるための普及啓発  依存症の本人や家族等が適切な相談支援機関につながれるよう、相談先に関する情報の提供や依存症に関する正しい知識の啓発を進めていきます。また、啓発に向けた取組は、必要な情報が「多くの人の目に触れること」及び「ハイリスクの人の目に触れること」の両面を重視して実施していきます。 (囲みここまで) (1)総合的な依存症対策の取組 ア:依存症の本人や家族等が相談につながる普及啓発 ○依存症の本人、その家族や友人・知人などが相談支援機関について情報を入手し、相談につながることができるよう、メディアやインターネットを活用した情報発信など、多くの人の目に触れる手段・方法により相談支援機関に関する情報の提供・発信を行います。 ○厚生労働省が定める依存対象ごとの啓発週間に合わせて、相談勧奨や市民向けセミナー等の普及啓発を行います。(アルコール関連問題啓発週間:11月10日〜11月16日、ギャンブル等依存症問題啓発週間:5月14日〜5月20日) イ:幅広く身近な場所での普及啓発 ○重複障害、多重債務や生活困窮、DV・虐待等の問題を抱える依存症の本人や依存症が疑われる人に相談支援機関に関する情報が効果的に伝わるよう、訪れる可能性が高い区役所の関係各課(高齢・障害支援課、生活支援課、こども家庭支援課、福祉保健課等)の窓口などにおいて、チラシの配架・配布など、相談支援機関や専門的な支援者に関する情報の普及啓発を行います。 ○他の障害が重複する人に相談支援機関の情報を効率的・効果的に提供するため、精神障害者生活支援センター、基幹相談支援センター、発達障害者支援センター、相談支援事業所等の身近な支援機関・団体における普及啓発の取組を推進します。 ウ:家族等向けの啓発 ○依存症の本人や依存症が疑われる人の抱える問題などについて、区役所の関係各課などに相談に来た家族等に対し、リーフレットの配布などを通じて相談支援機関や専門的な支援者に関する情報の提供などを行います。 ○専門的な医療機関への依存症に関する相談については、依存症の本人だけでなく、その家族等でも行うことが可能な場合もあります。家族等からの一次相談に基づき早期発見・早期支援につなげていくために、家族等や身近な支援機関の職員などに、受診できる医療機関の周知を進めていきます。 エ:民間支援団体等による講演会等の開催 ○依存症の回復を支援している民間支援団体等において、依存症の本人や家族等に対する相談や回復支援に関する情報提供のため、講演会等を開催します。また、本市において、開催の周知支援などを行います。 オ:インターネットを活用した情報提供 ○こころの健康相談センターがホームページ上で提供する依存症に関する情報発信の充実を図るため、Web上でできるチェックリストの提供や、チェック結果を踏まえて本人等のニーズに合った相談・支援・医療機関の検索ができるWebサイトの作成などを進めていきます。 (2)アルコール依存症に特化した取組 ア:産業保健分野による普及啓発 ○産業保健総合支援センターなどと連携しながら、市内企業等の従業員に向けたアルコール依存症の問題に関する情報提供を行うとともに、アルコール依存症が疑われる人に対して受診・相談勧奨を行う取組の支援について、検討を進めていきます。 ○市職員に向けて、健康管理医・保健師等から飲酒による健康問題に関する講義、アルコール依存症に関する相談対応等を実施します。 (3)薬物依存症に特化した取組 ア:重複処方の人へのお知らせ ○医療機関への重複受診及び重複・多剤処方が見られる人に対し、文書等の送付により処方薬を対象とした薬物依存の問題に関する注意喚起を行います。 ○重複処方の人の中には、実際に依存症の状態になっている人も含まれると考えられることから、注意喚起に加え、専門的な支援者などの情報も提供します。 (4)ギャンブル等依存症に特化した取組 ア:ギャンブル等依存症の本人等が相談につながる普及啓発 ○場外券売り場や借金・多重債務問題の相談、法律相談などといった依存症の本人等の目に触れる機会や場を捉え、リーフレットの配架・配布など、相談支援機関に関する普及啓発、情報提供を進めていきます。 (コラムここから) コラム・ぱちんこ事業者や公営競技事業者による依存症対策  ぱちんこ事業者や公営競技事業者においては、ギャンブル等依存症の対策に向けた様々な取組を進めています。  例えば、全国のぱちんこ事業者からなる「パチンコ・パチスロ産業21世紀会」では、ぱちんこ依存問題について無料電話相談を受け付けている非営利相談機関「リカバリーサポート・ネットワーク」への支援・寄付を行っています。  また、全国の競馬・競輪・モーターボート競走等の施行事業者からなる全国公営競技施行者連絡協議会においても、「公営競技ギャンブル依存症カウンセリングセンター」を設置し、ギャンブルへの依存に不安を抱える本人や家族等から、電話及びメールで相談を受け付ける体制を整えています。  このほか、ぱちんこ事業者や公営競技事業者においては、本人や家族等の申告に基づく入場制限、場内におけるATMの撤去等など、様々な角度からの取組を進めています。  上記の取組と合わせて、ギャンブル等依存症の本人や家族等が相談や適切な支援につながることを促進するため、ギャンブル等が行われる場所での行政等が作成した広報物の配架・配布等による普及啓発への協力や、支援に関して行政等の関係機関と情報共有していくことが考えられます。  国が策定したギャンブル等依存症対策基本計画では、取り組むべき具体的な施策として、各地域における包括的な連携協力体制の構築が示されており、本市においても今後同計画との整合性を図っていく必要があります。 (コラムここまで) (囲みここから) 重点施策4 身近な支援者等から依存症支援につなげるための取組  身近な支援者等による依存問題を抱える人の発見と、専門的な支援者への円滑なつなぎに向けた取組を推進していきます。また、依存症以外に様々な生活面等での問題を抱える当事者に対し、身近な支援者が効果的に地域生活支援を提供していくために必要な取組を展開していきます。 (囲みここまで) (1)総合的な依存症対策の取組 ア:連携会議による支援情報の収集と共有等 ○依存症の本人等に対する包括的な支援を実施するため、行政や医療、福祉等を含めた関係機関が密接な連携を図るとともに、地域における依存症に関する情報や課題の共有を目的とした連携会議を定期的に開催します。 イ:行政、民間支援団体等、医療機関、身近な支援者などの幅広い支援者のネットワーク、顔の見える関係の構築 ○依存症の本人等に対する包括的な支援体制の構築や適切な回復支援へのつなぎの推進に向けて、連携会議なども含め、行政、相談対応や回復支援に関わる民間支援団体等、一般・専門的な医療機関、身近な支援者などによる幅広い支援者ネットワークと顔の見える関係づくりを進めていきます。 (コラムここから) コラム・横浜市依存症関連機関連携会議  本市では、依存症の本人や家族等に対し、幅広い分野の関係機関・民間支援団体等が支援を行っています。  こうした多様な支援者の横のつながりをつくり、支援者間の相互理解を深め、依存症の本人等に対する包括的な支援の実施に向けて関係機関が密接な連携を図ることができる環境を構築していくため、国の実施要綱に基づき、令和2年度より「横浜市依存症関連機関連携会議」(連携会議)を設置・開催しています。  連携会議の参加者は、依存症を取り巻く問題の多様性・複雑性に応じて行政、医療、福祉・保健、教育、司法など多岐にわたり、定期的な会議の開催を通じ、依存症の本人や家族等の支援に関する情報や課題の共有、支援に関する連携や調整、研修計画の検討などを行います。 (コラムここまで) ◆横浜市依存症関連機関連携会議のイメージ図 (図ここから) 横浜市依存症関連機関連携会議 依存症の本人や家族等に対する包括的な支援に向けた関係機関間の密接な連携 機関 医療機関/回復支援施設/自助グループ・家族会/行政/福祉・保健/教育/司法 ◆連携会議での協議事項 ●依存症の本人や家族等の支援に関する情報や課題の共有に関すること ●依存症の本人や家族等の支援に関する連携や調整、研修計画に関すること ●その他依存症の本人、家族等の支援に関して必要なこと 開催の企画・情報提供 横浜市 こころの健康相談センター (図ここまで) ウ:支援ガイドラインの作成及び支援者向け研修の実施 ○依存症の本人や依存症が疑われる人、その家族等と接点を持つことの多い区役所関係各課や身近な支援者から、専門的な支援者へ適切なつなぎを行うための初期チェックリストや連携フローなどを記載した、支援ガイドラインの作成を進めます。 ○身近な支援者における依存症理解の促進と支援の向上に寄与するため、研修等を実施します。 エ 身近な支援者から専門的な支援者へつなぐ取組 ○依存症の本人や依存症が疑われる人、その家族等からの相談に対して、関係機関と連携を図りながら、身近な支援者から専門的な支援者への適切なつなぎを行います。 オ:身近な支援者と連携した取組 ○身近な支援者において、依存症の理解を促進する研修をこころの健康相談センターと連携して開催するなど、依存症関連の取組を進めていきます。 カ:福祉サービス提供事業者等への情報提供や研修の実施 ○在宅の要介護者や障害者にとって最も身近な支援者の1つである介護事業者や障害福祉サービス事業者、相談支援事業者において、支援対象者やその家族等が依存症の問題を抱えていた場合に専門的な支援者へつなぐことができるよう、依存症に関する情報提供や研修等を行います。 ○保護者等が依存症の問題を抱えている子どもも少なくないと考えられることから、保育・教育機関の職員などを対象とした情報提供や研修などを実施します。 キ:市内の支援者情報をまとめた情報ツールの整備 ○身近な支援者が、対象者のニーズに合った支援者を検索できるよう、市内の支援者の情報をまとめた情報ツールを整備します。 ク:救急医療機関との連携 ○救急医療機関において、アルコールや薬物の多量摂取や事故等による外傷で運び込まれた人に依存症の疑いがある場合、容態が安定した入院者やその家族等が専門的な支援者につながることができるよう、依存症に関する基本知識や専門的な支援者の連絡先等を掲載したリーフレットを院内に配架・配布し、啓発を行います。 ケ:かかりつけ医研修 ○依存症の問題が起こった際にかかりつけ医に相談する人が一定数いると考えられることから、多くの市民が継続的な関係を構築している「かかりつけ医」を対象とした研修において依存症についても取り上げます。 コ:区役所の関係各課が連携した相談等への対応 ○依存症の本人や依存症が疑われる人、またその家族等から依存症及び関連する問題の相談を受ける可能性がある区役所の精神保健福祉相談及び関係各課(高齢・障害支援課、生活支援課、こども家庭支援課、福祉保健課等)において、研修受講などを通じて、依存症への理解の向上と相談対応力の強化を進めていきます。 ○相談を受けた担当課だけでは対応が難しい場合には、関係各課や関係機関と横断的な状況共有や連携した対応を行っていきます。 サ:医療関係者による支援者向け研修 ○身近な支援者等における、特に医学的な見地からの依存症理解を深めることを目的として、専門の医師等による支援者向け研修を開催します。 (2)アルコール依存症に特化した取組 ア:内科等での気付きとつなぎ ○医療機関の内科等において依存症が疑われる事例をスクリーニングし、専門的な支援者へとつなぐための仕組みづくりを検討します。 ○依存症の本人や依存症が疑われる人がアルコールに起因する疾患により内科を受診した際に、医師やその他の医療従事者が依存症の可能性に気付き、専門的な医療機関や民間支援団体等へつなぐことができるよう、医療従事者等に向けて依存症にかかる情報提供や研修などを開催します。 (3)薬物依存症に特化した取組 ア:保護観察所との密な連携と情報共有 ○薬物等に関連する犯罪等により保護観察処分となっている人を再犯防止に向けた適切な支援へつなぐため、保護観察所と連携して、当事者への市内の相談支援機関に関する情報提供や研修の実施等を進めます。 ○薬物依存のある保護観察対象者等の支援に係る実務者検討会や地域支援連絡協議会に参画し、県内自治体や保護観察所との情報交換や連携などを緊密に行う体制を構築します。 ○国立精神・神経医療研究センターが実施する、薬物事犯による保護観察対象者を対象とするコホート調査に協力します。この調査は、対象者に定期的に電話による聞き取り調査をすることで、回復や再使用等に影響する要因を明らかにすることを目指すとともに、切れ目のない支援体制の構築に向け、行政や関係機関・団体が連携して治療や支援等を行う地域体制の構築を目指すものです。 (4)ギャンブル等依存症に特化した取組 ア:消費生活総合センターから専門的な支援者へのつなぎ及び啓発 ○消費生活総合センターへ寄せられる多重債務等に関する相談の中には、ギャンブル等依存症がその背景にある場合があります。 依存症の本人や依存症が疑われる人から相談があった場合に、消費者庁のマニュアルに基づいて同センターから専門的な支援者へつなぐとともに、消費者庁のホームページ等に掲出される情報を紹介するなどの啓発を行います。 4 三次支援にかかる重点施策  三次支援については、「支援団体ごとの特色を生かし、多様なニーズに対応するための情報共有」、「支援者によるアセスメント力向上」、「専門的な支援者等が継続的に活動するための支援」、「様々な支援ニーズに取り組む民間支援団体等の運営面等の課題への対応」、「回復段階において新たに顕在化する課題への対応」といった課題に対応するため、2つの重点施策を設定しました。  施策の主な対象者は、依存症からの回復段階にある本人及びその家族等と、本人の回復を支援する専門的な支援者とします。 (囲みここから) 重点施策5 専門的な支援者による回復支援の取組  依存症からの回復を支援する専門的な支援者が、それぞれの強みを生かして支援を実施します。また、民間支援団体等が安定的な支援を継続できるよう、各施設における危機管理や人材育成等を支援する取組を推進します。 (囲みここまで) (1) 総合的な依存症対策の取組 ア:行政における相談支援 ○こころの健康相談センターにおいて、専門の相談員が依存症の本人や家族等からの相談を受けるとともに、回復プログラム等の案内や区役所との連携、専門的な支援者等へのつなぎを行います。 ○区役所の精神保健福祉相談において、身近な相談窓口として相談対応を行うとともに、福祉サービスの利用の決定や訪問・介入などの継続的な支援、地域の資源を活用した支援を実施します。また、依存症に起因すると考えられる福祉課題への取組については、区内の関係各課が連携して複合的な問題に対する支援を実施します。 イ:回復プログラム・家族教室の実施 ○回復へのきっかけづくりや本人のニーズに合った専門的な支援者へのつなぎを行うため、こころの健康相談センターにおいて、依存症のメカニズムや再発のサイン・対処法について本人と一緒に考える回復プログラムを実施します。 ○家族等が依存症について学び、対応方法や回復について考える家族教室をこころの健康相談センターや区役所で実施します。 ウ:民間支援団体等による依存症の本人や家族等への支援 ○多様性のある本市の民間支援団体等が、それぞれの特性を生かして、依存症の本人や家族等の回復に向けた取組を実施します。他の民間支援団体等や関係機関と情報共有を図りながら、本人や家族等のニーズに合った支援の提供を進めます。 エ:利用者のニーズに合った制度の検討 ○障害福祉サービス事業所や地域活動支援センターとして運営している民間支援団体等では、障害者総合支援法等の制度の中では対応しきれない利用者のニーズ等が一定程度存在しており、依存症特有の課題について各制度との調整を図ります。 オ:民間支援団体等への活動支援 ○民間支援団体等が継続して依存症の本人や家族等を支援できるよう、ミーティング・普及啓発・相談等の団体の活動を補助します。 ○男女共同参画センターにおいて、自助グループの活動場所の提供等の支援やセミナー開催の支援を実施します。 カ:施設の危機管理体制充実に向けた支援 ○自然災害や事件、新型コロナ等の感染症の流行等から施設の利用者や職員を守るため、施設運営に関する情報提供や緊急時対応マニュアルの作成を推進します。 ○防災・防犯・感染症予防に必要な物品の導入補助など、施設の危機管理体制の充実に向けた支援を行います。 キ:スタッフの人材育成・セルフケアのための取組 ○民間支援団体等のスタッフの継続的な人材育成を図り、スタッフの「燃え尽き症候群」(バーンアウト)や離職を防止することを目的として、支援スキルの向上やセルフケアのための研修の開催、施設を越えたスタッフ間のネットワーク形成を支援します。 ク:連携会議による情報共有 ○身近な支援者や専門的な支援者が参加する連携会議を定期的に開催します。行政、医療、福祉・保健、司法などの関係機関がお互いの理解を深め、依存症の問題で悩む人が必要な支援にアクセスしやすいネットワークの構築を目指します。 ケ:専門的な医療機関の充実に向けた研修等の実施 ○依存症の治療に対応できる医療機関の充実を図るため、精神科等の医療関係者に対する研修等を実施します。 (囲みここから) 重点施策6 地域で生活しながら、回復を続けることをサポートする取組  依存症の本人が回復支援施設等から地域に生活の場を移した後に、孤立せず、様々な支援者とつながりながら、回復を続けていくことができるような取組を行います。 (囲みここまで) (1)総合的な依存症対策の取組 ア:連携会議によるサポート体制の構築 ○連携会議を通して、地域生活において関わることの多い身近な支援者が、専門的な支援者と支援情報の共有等の促進を図り、地域生活の中で回復し続けられる支援体制の構築を目指します。 イ:地域における依存症の支援 ○依存症と重複しやすい精神疾患(うつ病など)のある人は、依存症の回復だけではなく日常生活のサポートを必要とする場合があります。 地域生活の中で回復が続いていくよう、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」構築に向けた協議の場等でも関係する各主体(行政、福祉サービス事業者、医療機関等)と専門的な支援者が情報や技術を共有し、依存症の本人が孤立せず安心した地域生活を送れるような支援体制を築いていきます。 ウ:回復や支援に関する情報共有 ○地域で生活を送る依存症の本人に対する支援のあり方を関係機関全体で共有し、支援の質の向上と回復プロセスの周知につなげていくため、様々な回復プロセスを共有し、行政や民間支援団体等、一般市民に対して広く周知を図ります。 エ:更生保護と一体となったサポート ○薬物等に関連する犯罪を犯した人が、社会の中で孤立し、薬物使用を再び繰り返してしまうことを防ぐため、保護観察所等と連携し、当事者に対して民間支援団体等の情報提供や依存症以外の問題も含めた相談対応を進めていきます。 ○国立精神・神経医療研究センターが実施する、薬物事犯による保護観察対象者を対象とするコホート調査に協力し、対象者への継続的な支援を実施します。 オ:就労の支援 ○依存症の本人の就労の促進に向けて、行政と民間支援団体等が連携し、依存症からの回復者を雇用する企業や関係機関に対し、依存症からの回復と就労の両立のために必要な知識等(スティグマの防止、回復プロセスにおいて長期的な視点が求められることなどへの理解)の普及啓発を行います。 ○若者サポートステーションにおいて、就労に向けて様々な困難を抱える15〜49歳の人及びその家族等を対象として、総合相談や就労セミナー、就労訓練等を実施し、職業的自立に向けて支援します。 ○障害者就労支援センターにおいて、働くことを希望する障害児・者を対象として、就労に関する相談、職場実習等を通じた適性把握、求職活動支援や就労後の定着支援等を、企業や関係機関と連携しながら行います。 カ:自立後の住まいの確保 ○依存症からの回復過程にある人や、依存症に関連する犯罪により刑務所等から出所した人が、地域の中で自立した生活を続けられるよう、住まいの確保に向けて、依存症に関する正しい知識の周知を進めて、広く偏見の解消を図ります。 ○住宅に困窮する低額所得者で市内に在住または在勤の人に対しては、公募により、低廉な家賃で市営住宅を提供します。 ○低額所得者、障害者等が民間賃貸住宅への入居をしやすくする仕組みとして「住宅セーフティネット制度」を活用していきます。 ○住宅確保要配慮者の居住支援を充実させるため、横浜市居住支援協議会と不動産事業者や福祉支援団体、区局の連携を強化する制度の検討を進めます。