4 データ分析の結果に基づく健康課題 医療費情報から見る分析 <医療費の推移> 分析結果  総医療費は平成29年度から令和3年度にかけて減少傾向にありますが、一人当たり医療費は平成29年度から令和元年度にかけて増加し、令和2年度に一時落ち込んだものの令和3年度では再び増加に転じています。 健康課題  被保険者数の減少に伴い、平成29年度より総医療費は減少傾向にあります。 一方、一人当たり医療費は新型コロナウイルス感染症が流行した令和2年度を除き増加していることから、引き続き被保険者の健康保持増進及び医療費適正化を目的とした対策が必要です。 <疾病大分類別医療費統計> 分析結果  被保険者一人当たり医療費は新生物が最も高額となっており、次に循環器系の疾患となっています。 健康課題  新生物は悪性新生物(がん)の医療費が大部分を占めており、循環器系の疾患は高血圧症、脳血管疾患及び心血管疾患が含まれる分類です。上記のような生活習慣病への対策の継続が必要です。 <疾病中分類別医療費統計><高額医療費の状況> 分析結果  医療費、患者一人当たり医療費及び高額レセプトの件数において腎不全が上位となっています。 健康課題  慢性腎不全は重症化すると人工透析を必要とします。人工透析は患者及び家族への負担が大きく、医療費も高額であることから、腎不全の重症化予防対策の継続が必要です。 <人工透析患者の状況> 分析結果  平成29年度から令和3年度にかけて、人工透析患者数とその医療費は減少傾向にあります。令和3年度の一人当たり医療費は、人工透析患者が5,658千円、人工透析を受けていない患者が340千円です。 健康課題  被保険者数の減少に伴い人工透析患者数は減少傾向にありますが、人工透析患者の一人当たり医療費は人工透析を受けていない患者の約16.7倍であることから、引き続き腎不全の重症化予防対策の継続が必要です。 <新規人工透析患者の状況> 分析結果  令和3年度の新規人工透析患者数は242人です。そのうち、糖尿病を併発している患者は77.3%で、併発していない患者は22.7%です。 健康課題  新規人工透析患者のうち約8割が糖尿病を併発しています。糖尿病が人工透析に至る全ての原因ではありませんが、人工透析へ至る主要な疾患に糖尿病性腎症があることが考えられます。 新規人工透析導入の予防のため、糖尿病性腎症重症化予防対策の継続が必要です。 <糖尿病治療中の歯科未受診者の状況> 分析結果 糖尿病治療中の方のうち、約半数が歯科未受診者です。 健康課題 糖尿病の重症化予防に関係があるといわれている歯周病のチェックを定期的に受け、適切な治療につなげることが重要です。 実施結果、特定健診・特定保健指導情報から見る分析 <特定健診受診率> 分析結果  特定健診受診率は、平成30年度から令和元年度にかけて上昇し、令和2年度に落ち込みが見られたものの、以降は再び上昇して令和4年度は26.0%となっています。また、全年度において神奈川県平均、全国平均よりも低い状況です。 健康課題  特定健診受診率を向上させ、より多くの被保険者の健康リスクを把握することが必要です。 <過去3年間における受診回数別の特定健診受診者割合> 分析結果  令和元年度~令和3年度の3年間において、特定健診を1回でも受診したことがある方の割合は34.4%となっています。年齢階層別にみると70歳~72歳が最も高く、45歳~49歳が最も低くなっています。 健康課題  高齢層においては、若年層に比べ連続受診の傾向がみられるものの、どの年齢階層においても継続して受診する割合は低い状況にあります。このため、全ての年齢階層において、継続受診を促すアプローチが必要です。 <受診勧奨判定値該当者数> 分析結果  平成29年度~令和3年度における受診勧奨判定値該当者割合の推移をみると、血圧・肝機能・血糖・尿酸で上昇傾向にあることがわかります。 健康課題  受診勧奨判定値該当者割合が低下するように対象者の生活習慣改善を促していく必要があります。 実施結果、特定健康診査・特定保健指導情報から見る分析 <初回健診受診者における受診勧奨判定値等の基準該当状況> 分析結果  令和3年度における40歳~45歳の初回健診受診者について、3割以上で受診勧奨判定値を超える検査項目がありました。 健康課題  初めて健診を受ける時点で検査値が受診勧奨判定値を超えている方が多数存在しています。特定健康診査受診率を向上させ、より多くの被保険者の健康リスクを把握することが必要です。 <特定健診未受診者の生活習慣病受診状況> 分析結果  特定健診未受診者の61.5%が生活習慣病で医療機関を受診しています。 健康課題  健診を受診することにより、本人や医師が把握していない潜在的な追加リスクについて知ることができ、より精緻な診断や治療が可能となるため、医療機関からの健診受診勧奨が重要です。 <受診勧奨判定値放置者の状況> 分析結果  特定健診受診者のうち29.8%が受診勧奨判定値に該当しているにも関わらず医療機関を受診していません。 健康課題  受診勧奨判定値を超えた対象者に医療機関受診を促す取り組みが重要です。 <特定保健指導終了率> 分析結果  特定保健指導終了率は平成30年度の7.7%から令和4年度の8.5%へ上昇しているものの、神奈川県平均、全国平均と比較して低い状況です。 健康課題  特定保健指導終了率を向上させ、より多くの被保険者の生活習慣の改善を促すことが必要です。 <特定保健指導終了者における指導終了時の改善状況> 分析結果  特定保健指導終了者の指導終了時の検査値改善状況はBMIが65.9%、収縮期血圧・拡張期血圧がともに70%以上です。 特定保健指導利用者・未利用者の翌年度の特定健診結果をみると、利用者は未利用者に比べて特定保健指導該当者の割合が低く、LDLコレステロールを除く全ての検査項目で改善者割合が高くなっています。 健康課題  特定保健指導の実施者には検査結果の改善がみられる割合が高く、一定の効果を示しています。特定保健指導実施率を向上させ、より多くの被保険者の生活習慣の改善を促すことが必要です。 保健事業に関する分析 <重複受診者の状況> 分析結果  重複受診が最も多い疾病は睡眠障害で、次いで詳細不明の糖尿病、3番目は本態性高血圧症です。 <重複投薬者の状況(重複処方数別)> 分析結果  重複処方数が6~10種類の方が最も多く、次いで11~20種類の方が多くなっています。 <多剤投与者の状況(多剤処方数別)> 分析結果  多剤処方数が6種類の方が最も多く、そこから処方数が増えるにしたがって人数が減少していく傾向にあります。 健康課題  重複する検査や投薬、多量の投薬により、かえって体に悪影響を与えてしまう心配があります。また、医療費の増大も招くため、重複受診者・重複投薬者・多剤投与者を減らすための対策が必要です。 健康課題への対策  【1】生活習慣病の対策  【2】生活習慣病等重症化予防対策  【3】適正受診対策